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鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
4000年前の中国とその時の日本



「…バカ。」

 桃太郎君が薬を煮ている時、鬼灯様が淫獣に向かって口を開いた。

「カバ。」
「ばけものにかばといわれたくないですよ。」
「よくいうよ。おまえがばけものだろ。」

「…あの、あれ止めなくて良いんですか?」
「いいの。いいの。止めようとしたって止まる人達じゃないでしょ?」

 桃太郎君が鬼灯様と淫重を見ながら問いかけるのに対してそう返した。

「ろくでなしのしきま。」
「まぬけのそこぬけじょうご。」
「ごくらくとんぼ!!」
「ぼくねんじん!!」

 淫獣が叫んだ時、何かに気づいたようにハッと息を呑んだ。

「やべ! んがついちまった!」
「はい。負け。」
「ね? 止めなくて大丈夫でしょ?」
「ええ。っていうかおたくら、仲悪い割にはしょっちゅう勝負事してますよね?
しかも、何のしりとりなんだか?」
「何ってしり揚げ足とり。」

 ろくなものをとってないし。

「私としてはこんな事してないで早く帰りたいです。薬はまだですか?」
「もう少し待ってください。」

 桃太郎君は鍋の中身をかき混ぜながら答える。

「修行中とはいえ薬剤師が板についてきたよね。」
「ええ。以前の古式ゆかしい格好した桃太郎さんとは大違いです。」
「それ言わないでください。
実は、コレじいちゃんの格好を意識して…。」

 そこまで言いかけ、三角巾に手を当てる桃太郎君。

「あの、白澤様。前々から違和感あったんですけど、三角巾の位置おかしくないですか?」

 確かに。普通は前髪が落ちないように三角巾で完全に覆いかくす淫獣は前髪が出てる。

「だって、僕は本来ここにも目があるし。」
 言いながら前髪をかきあげるとおでこに目玉の刺青らしきものがあった。

「身体にも左右に3つずつあって、角も6本あるんだ。ちょっとコレ見て。」

 言いながら、百鬼夜行なる本を差し出した。その中のあるページには白澤の獣の時の姿が描かれていた。

「なるほど。そこに布当たってると痛いんですね?」
「イヤ、痛くはないけど、もやっとする。」

 ホントの目玉じゃないから痛くはないだろうけど、それでも目に当たってると違和感あるんだろうな。

「市販の眼薬だと足りなさそうだ。眼薬に浸かっていた方が早い。」
「どういう着眼点だよ?
しかし、その絵もないよね?」
「お前の自画像より何倍もマシだろ。」

 確かに。あの絵は何かの呪いがかかっているとしか思えないよね。

「正直言って、帝が広めた僕の姿絵も不満。もうちょっとうまく描いてくれればいいのに。」
『何の話?』

 事情を知らないボクと桃太郎君が同時に問いかける。

「知らない? 4000年前に黄帝という皇帝が広めた姿絵って僕自身が広めたものなんだ。
あの頃の僕はやんちゃでね。あの時もあり得ないくらい酔っ払って雲から踏み外して、酔いと落下の衝撃で正体出しちゃったんだよ。」
「正体って言われても、こっちの姿を見慣れてるからな。」

 ボクも。というか獣姿の淫獣って見たことないよ。

「獣の姿じゃ女の子と遊べないからね。」

 いろいろ最低だ。この淫獣。

「それで、目が覚めたら、
『とったどー!!』
と言わんばかりの勢いで黄帝とその家来に捕まっちゃった。」
「それは、為政者としてはラッキーだよね?」

 ボクの言葉に桃太郎君の視線がボクに向いた。

「白澤という神獣は病魔除けのシンボルとして大人気だったし、優れた知性を持つ王の元に現れるという俗信があるんだよ。」
「俗信じゃなくて事実だよ。
で、魚拓じゃなくて白澤拓にされそうだったんで代わりに11520の妖怪を下呂って逃がしてもらった。」
「コイツ妖怪界の最凶の裏切り者じゃねーかよ!!」
「だって、ヘベレケに酔っ払ってたし、男な臭いを1000倍も濃くした臭いがした。
しかも、黄帝ときたら、人が誠心誠意込めて描いた絵をあっさり使い物になんないなんて言うかな? ヘボ皇帝。」
「どちらかというとボクは英断だと思うよ。」
「しかし、4000年前というと不思議ですね。」
「そうだね。1000前でもボクはお母さんがお腹の中にいなかったじきだから不思議に感じるよ。」
「ひょっとして云鬼さんって年下?」
「言われればそうだね。あまり、地獄に年の意味がないけどね。
そういえば、鬼灯様は日本地獄にいました?」
「いました。あの頃の日本は黄泉中てんやわんやでした。あの世の制度を整える為世界中を回ってましたね。
…そういえば、桃源郷で酒を飲みかわしながら日本に栽培制度を導入した場合の事語らいあったことがありました。何日も飲み続け、そいつは雲から踏み外して落下しましたけど、あれお前か。」
「元凶お前かよ。」
「白澤様って鬼灯さんと関わると良く落ちるな。」

 桃太郎君の呟きにボクは静かに頷いていた。


「お待たせしました。」
「ありがとうございます。では、私達はこれで。」
「出てけ。出てけ。木偶の坊。」
「五月蝿いですよ。ボンクラの偶蹄目。」
「空気読めあんぽんたん!!」

 そう叫ぶ淫獣に人差し指を突きつけ。

「はい。また負け。」

 静かにそう言うのだった。

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