鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
2人の確執
「はい。どうぞ。白澤さんに渡してください。」
鬼灯様は自身の認印を押した書類を桃太郎君に返しながらそういうのに対し、桃太郎君は生返事を返しながら鬼灯様をじっと見るのだった。
「鬼灯さんって、白澤様に似てますよね。」
あ。そんな事を言ったら、黙らされるよ? 案の定、柱を砕いて黙らされた。ただ、鬼灯様もダメージがあったらしくて、痛そうに手をさすっていた。
「桃太郎君。鬼灯君は白澤君に似てるって言われると怒るんだ。」
「それはすみません。」
「いえ、こちらこそすみません。」
「他のどんなことでも鋼の精神ではねのけるのにコレだけは我慢できないらしくてね。だから、儂は時々コレで反撃を(しゅ!! かっ!!)…。」
言いかけた閻魔大王様のすぐそばにある柱にボールペンが突き刺さっていた。
「でも、なんでそんな事で? 何か理由でも?」
そういえば、ボクが最初に鬼灯様と出会ったのは700年ぐらい前だけど、その時には2人はあんな感じなんだよ。
「あれは今から1000年前だったかな。当時、中国と日本の間で和漢親善競技大会、今で言うオリンピックみたいな大会があってね。」
へー。1000年前にそんな大会があったんだ。
「鬼灯君は日本側の、白澤君は中国側の審判だったんだ。」
「審判? 代表選手じゃなくて?」
「2人共選手の域を超えててね。白澤君はあんな感じだけど、中国では妖怪の長とまで言われてるほどなんだ。」
「あんなのが妖怪の長とは世も末です。」
確かに。あのチャラチャラした淫獣が妖怪の長と言われてもピンとこないよ。
「日本はぬらりひょんが妖怪の長だけど、それもどうかと。
まあ、あの大会、白澤派VS鬼灯派でフィーバーしてたよ。」
あ。わかる。2人とも、見た目だけは良いからね。
「フギュッ!!」
「今失礼な事を考えましたね?」
金棒を人の腹部に叩きつけ問いかける鬼灯様に首を横に振り否定する。
「話を戻すよ?あれは大会の休憩中の事なんだ。
当時、飲み物を飲みながら廊下を歩いていると、椅子に座り沈黙していた2人がいたんだ。沈黙に耐えられなかったからか、おもむろに白澤君が目の前のついたてで入り口を直視出来ない厠を指さして賭を持ちかけたんだ。その厠から出てきた女性の胸が85センチ以上か以下か。
その賭にのった鬼灯君は以下に、白澤君は以上に。そして、出てきたのは男性とも女性ともつかぬスタッフ腕章をつけた日本の鬼だったんだ。」
それはさぞ判断に迷っただろうね。
「性別はともかく、胸囲は明らかに以上。
どうすべきか悩んだところでもう1人、以下の胸囲が出てきたんだ。」
あ。なんとなくわかった。
「最初に出てきた人物が女性か否かで揉めに揉めたんだ。そして、止めに入ろうとした儂につけられ傷がコレです。」
いい案配につけられた傷だまるで北斗七星だよ。
「もともと合わなくてピリピリしてたのにあの賭で一気に爆発したみたいでね。」
くだらない起爆剤。
「あの時はどうかしてました。あんな賭のらなければ良かったのです。
ですが、私は譲れません! あれは私の勝ちです!」
…執念深いね。
「閻魔様? スタッフ腕章つけた日本の鬼だったんですよね?探せば特定出来ると思うんですが?」
桃太郎君の言葉に顔を見合わせる閻魔大王様に鬼灯様。
「当時の名簿ならまだあるよ! その人には悪いけど、確認して仲直りしようよ。」
その言葉に、首を縦に振る。
「アタシ? ニューハーフだけど、どこも弄ってないわよ?」
当の本人の答えに思わず沈黙する3人。
その横で鬼灯様が物凄い勢いで携帯のボタンを押す。あ。なんかまた揉め事になる気配が。
「身体が男性なら胸囲も男性のものに見なします!!!!」
『いいや!! 心が女性なら胸囲は女性のものにするべきだとおもうね!!!!』
「…俺帰りますね。」
「ボクも。」
非常に疲れた表情でそれぞれの帰路についたのだった。
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