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鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
地獄の技術



「あ〜。君達。鉄钁処(てっかくしょ)に6つの大鍋があるんだが、その中の4番目の大鍋は極理刀鬘(ごくりとうまん)と言ってな。
 そこでは亡者を煮つつ、さらに内側に刃物をついた鬘をかぶせられるという拷問をするんだ。」

 記録課の職員2人が作業しながら話し合いをしていたら、記録課の主任、葉鶏頭がその2人に声をかける。

「へー。すごいっすね。」
「君達が切ったとか、切りすぎたとか、話していたのでふと思い出したのだよ。」
「あ…。」
「あはは……。」

 スキンヘッドの葉鶏頭に毛に関する言葉はコンプレックスのようなものだと認識した獄卒2人は苦笑いする。

「何をすると堕ちる所でしたっけ?」
「修行僧殺しを正当化すると堕ちる地獄だ。宗教家なんかが禊なんだとか言って、
信者を殺す事件なんかがもろに該当するな。」

 話題をそらす為に罪状を問いかけたら何故か感慨深く答えた。

「そんな奴は髪じゃなくて、血でも生やしてろってことだな。
実にじわじわ来る。
じわじわ来る。」

 話を聞いていた記録課の職員が首を傾げて別の職員に問いかけた。

「血を生やすってなんだ?」
「主任にとって、頭から吹き出るものは皆、等しく生えるなのかもしれん。」
「激しく禿げ散らかるといい!! 激しくな!!」

 ハイテンションに筆を止めない葉鶏頭に記録課の職員がひそひそ話をしていた。

「主任って徹夜明けか何かですか? めちゃくちゃ怖いんですけど。」
「よくある事だ。気にするな。慣れろ。基本はいい人だ。」

 記録課の職員が話し合っていたら、それを遮るかのように爆音が響き続ける。

「また技術課の連中か! 誰かクレームいれてきてくれ!!
室内で爆音鳴らされると迷惑だ!」

 その会話を聞いていた座敷わらし達が首を傾げていた。



SIDE 云鬼

「鬼灯様。鬼灯様。葉鶏頭さんが技術課が五月蝿くしていると怒ってるけど、技術課って何?」
「技術課は地獄の拷問道具の開発を専門に取り扱っている課です。」
「鬼灯様やボクも拷問道具や毒物を買って試したりするけど、それを専門に取り扱うのが技術課だよ。
金棒や刃物なんかは閻魔庁御用達のお店で一括購入するけど浄玻璃の鏡みたいに数個あれば十分なものは都度技術課に作らせてるよ。
ちなみに職員に平賀源内もいるよ。」

 裁きの間にやって来た一子ちゃんと二子ちゃんの問いに鬼灯様とボクがそう答えた。

「発明バカの連中で資料室で調べものしてそのまま作業し出したんだろうね。
あまりにおいたが過ぎると、屎泥処(しでいしょ)の元を作るふんころがし屎泥課(しでいか)にめでたく配属されるんだけどね。」

 ふんころがし屎泥課は日々最悪の屎泥を生み出すための研究している課で、あそこは基本鬼にはつけないんだよね。臭いとかきついから。
そんなことを思いながら資料室に向かうと、想像通り技術課の人達が騒いでいた。

「バカ野郎!! そこは3キロは重くなるんだから補強すべきだろうが!!」
「必要ないだろ! 軽い方がいいだろ!!」
「いや! 烏頭(うず)さんの言う通りでしょう!! ここは重要なパーツですから拘るべきでしょう!」
「そうだぞ! 蓬(よもぎ)! とことん拘ってこそのプロだろうが!!」

 技術課の3人が言い争いをしている。そのうちの1人鬼灯様が天井めがけ蹴りあげる。そしてボクが残りの2人の頭を掴み互いのおでこに相手の角を突き刺した。

「プロなら周りの迷惑にも気を配れ。3度目のうんこ帰りになりたいか? 烏頭?」

 鬼灯様の言葉にボクはおでこから血を流し痛そうにしている鬼に視線を向ける。

「鬼灯様の言う通りだよ。何で、既に4度もうんこ帰りを体験しておいてまた騒ぎを起こすかな?
そんなにふんころがし屎泥課が気に入ったなら、あそこに永久就職させようか? 鶏頭(けいとう)?」

 そこまで言ってから、ボクはもう1人のおでこから血を流している鬼に視線を向ける。

「蓬さん。技術課が何を調べているかなんて知らないし、休みの時間をどう使うなんて知ったことじゃないよ? でもね、そこのバカ2人がバカ騒ぎお越しそうなら止めてくださいよ。」

 ボクの言葉に蓬さんはすまんと頭を下げていた。

「うんこ帰り?」

 意味がわからないのか、一子ちゃんと二子ちゃんが首を傾げていた。

「ふんころがし屎泥課に配属された勇者に与えられる称号だよ。」

 そう解説すると、おでこに角を1本生やした鬼がボクに食って掛かる。

「おい、云鬼! 技術課と資料室の間が遠すぎんだよ!」

 鶏頭の言葉に頭に2本の角を生やした鬼が文句を言う。

「そうだ! 資料室まで行って欲しい資料を取ってもどるだけでも面倒なんだ!」

 あまりに身勝手な発言におでこに青筋が浮かんでいた。

「この脳味噌海月(のうみそくらげ)!! 資料室は全ての課が使うんだって何度も言ったよ!! 君達が好き勝手にしていい部屋じゃないんだよ!!」
「大体何を作ってたんですか! 仕事に関係ないですよね! そのロボット!」

 鬼灯様とボクとで言い返すと、烏頭さんが腕を組んで答えた。

「機械獄卒が出来ねーかなと思ってさ。」

 作りかけのロボットを見て一言呟いた。

「「美少女ロボット。」」

 鬼灯様とボクの呟きに烏頭さんは硬直していた。

「やっぱりね。バカと技術屋とオタクが手を組めば絶対作るだろうと思ってたよ。」
「じゃあいいだろう! 平賀源内も協力しての事だぞ!」

 ボクの言葉に鶏頭が食って掛かる。

「やるならやるで技術に執着してよ。鶏頭も烏頭さんも、途中から巨乳にすることに執着しだしたでしょ?」
「ここが一番技術が使うんだよ!」

 鶏頭の言葉に天然パーマ3本角の鬼がイライラしていた。

「別に巨乳にする必要ないって言ってるのにこのわからず屋が! 鬼灯もなんか言ってやって!」
「貴方は貴方でなんか変です。」

 鬼灯様と蓬さんがそんな会話をしていると一子ちゃんがボクの袖口をクイクイと引っ張る。

「鬼灯様と云鬼様。親しそう。」
「ああ。ボクとそこの海月頭、鶏頭は教え処に通っていた頃からの友達でね。…まあ、色々とあるんだよ。」
「私の場合は、そこの烏頭さんと蓬さんが私が黄泉に来たばかりの頃からの付き合いです。」
「腕は良いけど脳味噌空っぽでね。すぐに騒ぎを起こしちゃうんだよね。」
「こら。人を問題児扱いするんじゃねぇよ。」
「え?」

 予想外な言葉に思わず問いかける。

「おい、こら。なんだその『え?』は?」
「いや、だってねえ。」
「言っても聞かない人ですし、問題児扱いされても仕方ないでしょう。
完全防音の耳栓でも作ったらどうですか?」

 その言葉の意味が理解できないのか鶏頭と烏頭さんが首を傾げていた。

「技術課に五月蝿いとクレームが来てるんです。
言っても聞かない人ですし、いっそのこと耳栓を作ってタダで配れと言ってるんです。」
「あー。確かにその方がいいかもな。俺らが悪いんだしよ。」

 ボク達の会話を聞いていた一子ちゃんと二子ちゃんが蓬さんの袖を引っ張り問いかける。

「ねえ、鬘は作れる?」
「まぁ、作れるけど。」
「「じゃあ、耳栓付き鬘を作って。」」



「くれるのか?」
「「作業の時、少しでもストレスが無くなるように。」」

 記録課に入った時、一子ちゃんと二子ちゃんが耳栓付き鬘を葉鶏頭さんに渡す所を見た。

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