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鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
地獄



「お香姐さんって衆合地獄主任補佐だよね?」

 お香が座敷わらし達と遊んでいたら座敷わらしがそう問いかけた。

「そうね?」
「ということはその上に主任がいるんだよね?」
「そうなるわね。」



『このはしわたるべからず』
で有名な一休禅師は奇行が多く生臭坊主。その上不真面目でもあった。しかし、その行動の真意は深く、禅の道を求め大悟した。そんな変わり者な彼には変わり者な女弟子がいたという。



「鬼灯殿はどこにいてなにをしているか!」
「ここにいて仕事をしています。」

 お坊さんの言葉にたんたんと返す鬼灯様。

「…うむ。禅じゃ。深いのぉ。」
「いや、深くないです。」

 一休さんの言葉にボクはそう返した。

「仕事の邪魔だから帰ってくれないかな?」
「ヤダ!愛弟子と久しぶりに会えるんだ! 会うまでは帰らん!」
「はぁ。地獄太夫(じごくだゆう)さんならまだ来ないと思うよ?」



 室町時代、遊郭に売られた事を前世の行いの故と言い自ら地獄と名乗る奇特な遊女がいた。
ある日、一休禅師が彼女のもとに訪れ歌をかわしたという。彼女の頭の良さに感嘆した一休禅師は彼女を弟子にしたという。



「お久し振りです。お師匠。」

 地獄模様の着物を着た美人が輝鬼とお香さんを連れて来た。そして、その後ろには毎年の如く大行列をなしている。

「久しぶりじゃのぅ。太夫。お主よ。着飾ってどうする気じゃ? 大悟したんだろ?」
「お師匠。大悟しても衆合の礼儀がありますよ。」

 と師弟揃って含みのある会話してたら元桃太郎君の家来が来ていた。

「ねぇ、鬼灯様。云鬼様。この人誰なの?」

 大行列に興味をひかれたのか、シロ君が前に出てきて地獄太夫さんを見て問いかけた。

「地獄太夫さんといって衆合地獄の主任さんだよ。」
「へぇー。そんな人が何でここに? 何かの儀式?」
「いや、衆合地獄の報告書の提出しに来てもらっただけです。」
「それだけ?」
「うん。そう。」
 
 シロ君の問いに鬼灯様とボクが答えるけどそれでも納得がいかないようだ。

「それだけで、何でこんな派手な格好に?」
「地獄太夫さんも最初はこんな派手な格好じゃなかったんですよ。もっと落ち着いた格好していたんです。」
「ところが滅多に見れない衆合地獄のトップを一目見ようと大勢の人が押し掛けて、地獄太夫さんもそれに合わせて着飾るようになって今に至るというわけだよ。」
「…確かに私は悟りとは逆のことをしている。
しかし、大勢の人が喜んでいるし、お香と輝鬼が選んだから着ないわけにはいかないのだ。」
『ごめんなさい。だんだん小林幸子の気分になっちゃって。』
「そのうちエロクトリカルパレードしなきゃならなくなるから軌道修正してください。」

 輝鬼とお香さんの言葉に鬼灯様がそう苦言を言う。

「年々行列が増えて、いずれ何かの儀式が始まるんじゃないかという雰囲気が出るんだよ。
大悟した人がそんな騒ぎを起こさないでよ。
………それで、報告書は?」
『それが忘れました。』

 一糸乱れぬその言葉にボク達はため息を吐いていた。

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あきゅろす。
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