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鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
クレーマー



「ちょっと!! いい加減にしてよ!!」

 その怒声に驚いてシロ君、柿助君、ルリオ君が駆け寄る。

「何があったんですか?」
「よくあるクレームだよ。」

 ボクはため息をはいてその亡者を見る。

「この若い身で亡くなるなんて不憫だと思わないの?」

 その言葉にシロ君が首を傾げていた。

「若い身って、いくつなの?」
「いくつだと思う?」

 そのおばさんの言葉にシロ君達が慌てる。

「ま、不味い! これ絶対変なこと言ったら怒られるパターンだ!」
「な、何とかして! 鬼灯様! 云鬼様!」

 シロ君の言葉に鬼灯様とボクは同時に口を開いた。

『逆に聞きますが、何歳に見られたいですか?』

 その言葉に暫しの沈黙が訪れ何故か激怒した様子の亡者が口を開いた。

「30才前後とか気のきいたこと言いなさいよ!!」
「じゃあ、35で。」
「こーゆーのって何答えても、角がたつから。」
「今の受け答えが一番角がたつわ!!
だいたい、この若い身空で死んじゃって可哀想だとは思わないの!!」
「とりあえず、賽の河原にいる子供たちに謝ってこい。」
「それとこれは話が違うでしょ!! 頭悪いの!!」
 どう話が違うんだろう?

「こんな若い身空で亡くなって可哀想だから、生き返らせて、寿命もちょうだいよね!!」

 その無茶な要求に回りはため息を吐いていた。

「それに、今までのボンクラ共と違って閻魔なら話が通じるだろうと思ったら結局そこらのボンクラと変わらないし!!」

 十王を指してボンクラというなんてたいした根性だよ。

「ねぇ、云鬼様。こういったクレームって昔からあったの?」
「まぁね。未だ幼い子を残して亡くなった母親が子供が心配で死ぬに死にきれないから生き返らせて欲しいと訴えて来ることは度々あるよ。」

 例えば戦時中とか、飢饉の時とか。

「ねぇ、さっきから気になっていたけど、そこのワンちゃんに猿に鳥。」
「彼等は地獄の従業員ですが、何か?」
「ワンちゃん達を働かせちゃダメじゃない! 動物愛護団体に訴えられるわよ!」

 その言葉に固まっていたシロ君が何かにつけて気づいたように声を上げた。

「お、俺自分を愛護してない! う、訴えられる!」
「お前なぁ。さっきざんざん愛護しまくっていただろ?」
「大丈夫です。どのみち現世の愛護団体は地獄には通じません。」

 シロ君の言葉に柿助くんと鬼灯様が冷静に突っ込みを入れていた。

「あまり我が儘が過ぎると地獄に落ちるよ?」

 この人供物が来なかったし。この人の刑罰を減らす理由がないだよね。

「我が儘じゃないでしょ! 正当な要求だって言ってるでしょ! 頭悪いんじゃないの!」

 凄いクレーム入れてくるな。この人。

「そもそも、この人は何で死んだの?」
「彼女は騒音問題で隣人と口論になり隣人を刺殺。そして、逃走中交通事故で亡くなりました。」
「そのトラブった人がこの人だよ。」
「俺の方を生き返らせろ! 俺の方が可愛そうだろうが!」
「あんたは自業自得だって言ってるでしょうが!!」

 ボクの言葉に2人が口論を始めるのだった。

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