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鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
お酒と獄卒



「起きてくださいよ。」

 帰り道でその声が聞こえたので視線をそちらに向けたら烏天狗警察が巨体な獄卒を起こそうとしていた。大酒でも飲んだのか、一向に起きる気配がない。仕方ない。起こすか。道路のど真ん中で寝てられても迷惑だし。そう判断して獄卒に近づいてみぞおちに一発、顔の高さまで跳んで往復ビンタをした。

「すみません。これ。うちの獄卒です。後でしこたま殴って叩いて言うこと聞かせます。」

 ボクは烏天狗警察にそう言った。



「とまあ、こんなことが先日ありました。」

 講習会の場で、ついこの前起きた出来事を話すと見に覚えのある獄卒が胸を押さえていた。

「我々獄卒は酒が大好きな人種です。だから飲むなとは言いません。しかし、状況を弁えてください。また、云鬼さんみたいに酒が飲めない獄卒その人に合わせて完全禁酒している獄卒もいます。
こういった方に飲ませるのは大吼処(だいこうしょ)逝きです。
また、酒の席での袖の下ハニートラップは有煙火林処(うえんかりんしょ)。
酒で酔わせた女性に淫らな行いをしたものは殺殺処(せつせつしょ)や芭蕉烟林処(ばしょうえんりんしょ)逝きです。マナーを守らない獄卒など言語道断です。」

 鬼灯様が、そう言って壇上から下り、源義経さんが壇上に上がる。

「皆さん。この時期はお酒絡みのトラブルの絶えない時期です。だからこそ節度を守ってください。
かの有名な酒呑童子もお酒を飲んだところを倒されました。皆さんも気をつけてください。」

 源義経さんが壇上から下り、鬼灯様と閻魔大王様が壇上に上がる。

「えー。獄卒の皆さん。この後、忘年会を催すつもりです。是非とも参加してください。」
「ですが、先程の内容をきちんと頭にいれておいてください。
あまりにしつこいようなら殴るなり叩くなりしてください。」

 2人が壇上から降りてから衆合地獄から多種類の料理やお酒が運ばれる。

そして、

「あっはっは♪ 楽しいね♪」

 すっかり出来上がっている閻魔大王様を見て溜め息を吐いていた。

「云鬼様。今年1年お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。」
「ありがとう。柿助君。シロ君もルリオ君もこちらこそお世話になりました。来年もお願いね。」

 柿助君が湯呑みにお茶を注いでくれたお返しに桃太郎君の家来の3匹の器にお酒を注いた。

「ところで鬼灯様? シュテンドウシって何?」
「簡単に言うとお酒好きの鬼だね。平安時代に京都で暴れた鬼だよ。しゅてんはお酒を呑むと書いて酒呑、どうしは児童をさす字を書くんだ。」
「へー。今は何やって、」

 柿助君はそこまて言いかけたところでお酒を飲んでいい気分になった巨体の鬼が暴れまわっていたので避けることに専念していた。

「まったく。いい加減にしなさい!」

 ボクはそう言いながら、閻魔大王様を持ち上げとその獄卒めがけて投げつけていた。ちょうどその時、
「ちわーっす。酒呑酒造です。いつも贔屓にしていただきありがとうございます。」

 閻魔大王よりも大きそうな巨体の酒呑童子が酒樽抱えてきた。

「いてて。あ。父ちゃん。」
「おお。酒を飲むのは良いけど人に迷惑かけないようにな。お前は俺に似て酒好きだしな。」
 酒呑童子は自分の息子を見て呆れた表情で見ていた。

(皆さんもお酒の飲み過ぎには気を付けましょう。飲酒した挙げ句事故を起こしたら正月もあったものではありません。)

――――――――――――――
大吼処 日本八大地獄の一つ叫喚地獄を形成する十六の小地獄の一つ。仏の教えを学ぼうとするものに酒を飲まそうとするものが堕ちる。

有煙火林処 日本八大地の一つ叫喚地獄を形成する十六の小地獄の一つ。酒を飲ませ有利な取り計らいをさせようとする人が堕ちる。

芭蕉烟林処 日本八大地獄の一つ叫喚地獄を形成する十六の小地獄の一つ。女性に飲酒させ強姦したものが堕ちる。

殺殺処 日本八大地獄の一つ叫喚地獄を形成する十六の小地獄の一つ。女性に飲酒させ淫らな行いをしたものが堕ちる。

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