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鬼灯の冷徹 補佐官のサポーター
企業と桃源郷

SIDE 桃太郎

「また、企業が倒産か。」

 現世の新聞を眺めながら、閻魔庁を歩いていた。今日の目的は、うちの取引相手の鬼灯さんに薬を届けるためだ。それにしても、不況だな。最近企業の倒産が多いな。

「あ、鬼灯さん。云鬼さん。お久しぶりです。はい。これ。依頼された薬です。」
「ありがとう。桃太郎君。
確かに受け取りました。」

 云鬼さんが薬を受け取りながら頭を下げる。

「…ところで、そのお子さん達は鬼灯さんの子供ですか?」

 俺は鬼灯さんのそばにいる小さな少女が気になり、問いかけた。

「違います。現世の視察に赴いた時に出会い、彼女達の話を聞いて2人を連れてきました。」
「2人はなんて言ったんですか?」

 俺の問いに少女達が俺に近づいて口を開いた。

「…あたし達。おうちないの。おうち知らない?」
「恐いわ!」
「あのね。桃太郎君。日本人形みたいに可愛らしい座敷童子にたいして失礼だよ?」

 俺の言葉に云鬼さんが頬を膨らませて指摘するけど、その日本人形みたいに視点があわず、死んだ魚みたいに虚ろな瞳をしてあんな言葉を言われたらむちゃくちゃに恐い。って、

「その2人は座敷童子なの?」

 俺の問いに鬼灯さんが首を縦に振る。

「はい。どうやら、現世の企業のビルに住んでたのですが、夜でも昼のように明るいLEDがあわず出ていかざるをえなかった模様で行き場がなかったそうです。」
「人間って暗いの嫌いですもんね。」

 そこまで言ってあることを思い出した。座敷童子は家の守り神。座敷童子がいる家は栄えるが、家主が腐り努力を怠ると座敷童子はその家から去り、その家は潰える。

「あの、鬼灯さん。最近、現世の企業が急成長して倒産するのを聞いたんですが。」
「いくつかの企業は座敷童子がすんでいたのでしょう。」



SIDE 白澤

 …おかしい。お客さんで満員な店内を見て首を傾げた。
何か不吉な前触れでないと良いけど。…残念ながら、僕の不安が的中してしまった。



「…何? 君達?」

 僕は目の前にいる小さな座敷童子達を見て問いかける。

「あぁ。君達、鬼灯さんの。」

 桃(タオ)タロー君の知り合いらしい。

「座敷童子の一子。」
「二子。」
『ここに住まわせてもらいます。』

 頭を下げる座敷童子に僕は、

「この家を手放すよ!! タオタロー君も手伝って!!」

 僕はそう言いながら家の中のものを片っ端から外へと運んでいく。

「白澤様? 何でこの家を手放すんですか?」
「座敷童子(貧乏神)達を追い出すためだよ! 座敷童子は人のいる家にしか住まないからね!」

 通常、座敷童子が出ていくとき、その家が潰れるけど、空き家には不幸が訪れない。

「そんなことをしなくても白澤様は神獣だから、災難とかは防げるんじゃ?」
「家の守り神と神獣じゃ、家に関することは家の守り神の方が強いよ!」
「それにわざわざこんなことをしなくても白澤様がまともに働けば良いんじゃ?」
「僕にそんなことが出来るとでも?」

 問いかけながら、不動産に電話をかける。
30分後、やって来た不動産に空き家の立札を立ててもらい様子を伺う。

「ホッ。よかった。よかっ…?」

 僕の家から出ていく座敷童子達を見て息を吐こうとした時、座敷童子達がUターンしてこちらに近づく。そして、僕に携帯電話を差し出した。不安にかられながらも、その携帯を耳に当てた時、スピーカーから聞きたくない男の声が聞こえた。

『やはり、貴方も座敷童子の力には勝てませんか。』

 …そうか。全部お前の仕業か。

『空き家になったその家、閻魔庁が買い取りましょうか?』
「余計なお世話だ!! この野郎!!」

 僕はそう返しながら通話を切った。

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あきゅろす。
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