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黄金の闘技を模倣する者
人はそれをツンデレと呼ぶ


 国王陛下とヴァリエール公爵に話してから数か月がたった。その間にも、従者が二人に増えた。たった今、トレーニングを終わらせた所で、父様に呼ばれた。

「失礼します。」

「カウスか?入りなさい。」

 父様の言葉に部屋に入ると、父様は書類とにらめっこするのを止め、こちらに視線を向けた。

「父様。御用とお聞きしましたが?」

「ウム。例の件、ガリア国王より了承を頂いた。」

 その言葉に笑みを浮かべかけたが、次の言葉に表情を引き締める。

「但し、今ガリア国内で発生している問題の解決に手を貸して欲しい。
とそう言われた。」

 そう言いながら、机の上に置かれている紙を渡した。それを見てみると、数ヶ月前からガリア国内を荒らし回っている盗賊達を退治して欲しいというものだった。一度は軍隊を派遣したことはあったが、捕まえるには至らなかったらしい。

「わかりました。では、デネボラ、スバル、アクベンス。以上3名を引き連れ任務に当たります。アウストラリス子爵。」

「ウム。期待している。射手座。」



SIDE ???

 何を考えているんだ?僕は父の言葉にそう考えていた。ここ最近頭を悩ませている盗賊達の問題を他国の人達に任せる何て。コレでは、我が国の恥を晒すようなものではないか!

「えっと、ガリア国王からの協力者の方ですよね?」

 問いかけ、見上げる少女達に余計に腹立たしさが募ってゆく。援軍として来たのはたったの4人。大柄な少年少女に小柄な少女が二人といった組み合わせだ。

「そうだよ。僕はシャルル。よろしくね。」

 その苛立ちを隠してにこやかに対応しなければならない。

「はじめまして。お、私はカウスと言います。」

 リーダー格らしき少女は緑色のツインテールを揺らしつつ自己紹介する。

「俺はスバルと言います。シャルル殿しばしの間ですが、よろしくお願いします。」

 スバルと名乗った男の子は頭を下げる。

「私はデネボラです。短い間ですが、よろしくお願いします。」

 デネボラと名乗った大柄な少女も丁寧な対応してくれたが、

「俺はアクベンス。」

 一人だけ名前を名乗っただけだった。しかも、顔を仮面で隠しているし。

「君。何で顔を隠しているんだい?仮面を取らないのかな?」

「………あぁ。俺と殺しあいがしたいと?それとも、自殺志願者なのか?」

「は?」

 思わず呆然となる僕にデネボラさんが補足する。

「私達の間で女性は正装時は素顔を隠す事になってるんです。アクベンスは普段の時もそれを適用させているんです。見てしまったらその人を殺すか愛するかを選ばなくてはいけないんです。」

「という事は、デネボラさんも、カウスさんも?」

 ?僕の問いにカウスさんは不機嫌になる。

「あの、カウス様は殿方ですよ?」

「ウソォッ!!!!」

 デネボラさんの言葉に思わず叫んでカウスさんを凝視した。こんな可愛い子が男の子?

「………。」

 しかし、僕の叫びにカウスさんの不機嫌さは増してゆく。その態度に信じなければならないらしい。

「く………くく。」

 スバル君は必死に笑いを噛み殺そうとしている。アクベンスさんに至っては大笑いしている。



「どうぞ。貴族様方。何もないところですがごゆっくり。」

 村長らしき人物に宿を求めたら、僕とカウス君はこの部屋に通された。他の3人は別行動をしている。

「で、君達は盗賊達を探し出す気はあるのかな?」

「そんなの無いですよ?」

「ひょっとして、僕をバカにしているのかな?」

 カウス君の答えに怒りながら問いかける。

「もちろん、そんなつもりは無いです。コチラから探すより、向こうから探してもらう方が楽です。」

 あぁ。そういう事か。カウス君の言葉に彼の考えていた事が読めた。

「カウス君は僕とカウス君を囮にするつもりなんだね?」

 先ずは下準備として、貴族がとある街の視察に出かけたらオーガの襲撃に合い、護衛がごく僅な人数を残して全滅。慌てて生き残りの護衛を引き連れ、近くの村に逃げ込んだという噂を流す。後は待っていれば向こうから来てくれると言う算段か。まぁ、掛かるかどうかは五分五分といったところかな?

「ご名答。正解です。」

「しかし、かかるのかな?」

「まぁ、待ってみましょう?『果報は寝て待て』と言います。」

 そう言われて数日待って見た結果。

「カウス様。どうやら、作戦は大成功のようです。」

 デネボラさんがその報告をしに来たとき、カウス君は笑顔を見せていた。

「昨日から頻繁に聞きに来ている殿方がいました。」

 その言葉に僕も笑みを浮かべる。

「ここからが本番ですね?」

 確かにそうだ。コレでボスを逃したら、暫くは活動を休止するだろうけど、直ぐにまた再開するだろう。



SIDE ?

 俺達は森の中を歩いていた。部下から二日ほど前からとある街に遊びに来た貴族の坊っちゃんにオーガの襲撃に合い、命がらがらで逃げ出したという話を聞いた。詳しく調べに行かせたら、護衛もごく僅かしかいないそうだし、その貴族の坊っちゃんの逃げ先もわかった。こんな美味しい話はそうはない。襲撃してガッポリ稼いやろうかという事になった。森の中を歩いていると、一人の少女に出会った。

「ここから先は通れないよ?」

 そのガキは生意気にもそんな事を言いやがった。

「ハッハッハ!ガキが舐めた口叩きやがって!女はヒーヒー言ってりゃいいんだよ!」

 頭の言葉にガキは不愉快そうに眉をしかめると高らかに叫んでいた。

「来い!サジタリアス!」

 ガキが叫ぶと、背中に翼を生やした金色の人馬のオブジェが現れた。なんだ?アレは?困惑していると、そのオブジェがパーツ毎に分解され、ガキを護る鎧となった。

「サジタリアスのカウス。参る!」

 ガキはそう名乗ると手近にいたやつに殴りかかる。悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちる。更にもう一人を倒す。その頃には、俺達も武器を手に取り、構えていた。しかし、

「インフィニティーブレイク!」

 ガキは無数の風の矢を生み出すと俺達に発射する。その矢に射ぬかれた部下は倒れる。

「め、メイジだと!」

「や、やってられるか!」

 その惨状を見て、部下達は慌てて逃げ出す。

「くそったれ!」

 やけっぱちになりながらの一撃だったが、それすらもかわして、止めの一撃で意識を刈り取られた。

 

SIDE デネボラ

 どうやら、こちらに逃げてきたみたいね。こちらに近づいてくる足音からそう判断した。その数は、3人ぐらいかしら?大半はカウス様に取られたようね。彼等で昂りを静めれるかしら?そう思いながら、盗賊達に声をかけていた。

「この先は通行止めですわ。来なさい! 獅子座(レオ)!」

 私の呼び声に黄金の獅子のオブジェが現れ、それがパーツ毎に分解され私を護る鎧となった。

「通りたいのでしたら、獅子座(レオ)のデネボラを倒してからですわ。」

 私の名乗りに盗賊達は動揺して立ち止まる。そのスキにルーンを唱える。

「ライトニングボルト!」

 雷で出来た糸を男達に浴びせる。

「ギャアアアッ!!!!」

 悲鳴を上げ倒れてしまう。

「て、てめえ!」

 私を睨み付けながら必死に立ち上がろうとする。


「アラアラ?元気ですわ。
ライトニングボルト!」

 もう一度、雷の糸を放つ。アラアラ?今のでコチラに火が着いちゃったみたい。

「ライトニングボルト!」

 私の内に燻る衝動のままに何度も雷撃を浴びせる。

 その一撃が盗賊達に悲鳴を上げさせる。

「や、止め、」

「ライトニングボルト!」

 その声を無視して再び雷撃を放つ。それでも、悲鳴を上げたので再び雷撃を放つ。それを数回繰り返したら、悲鳴すら上げず痙攣していた。そして、ところどころ焦げていて香ばしい香りも出していた。

「まだまだですが、とりあえずはこの辺かしら?」

「遊びすぎだ。デネボラ。」

 私の呟きにそんな声が聞こえた。声の主は牡牛座(タウラス)の黄金聖衣(ゴールドクロス)をまとったスバルがいた。

「スバル?いつからそこに?」

「少し前からいた気づいていなかったデネボラが悪い。」

「…そちらには来なかったのかしら?」

 スバルの指摘に不機嫌に問いかける。

「二人ほど来た。後は、」

 そこまで、言いかけて、爆発音が鳴り響いた。

「アラ?どうやら、アクベンスが終わらせたようね?」

 あの位置はアクベンスが待機しているはずの場所だから間違いないはず。

「アクベンスか。」

 スバルは苦虫を噛み潰した表情になった。

「アラ?スバルは未だにアクベンスがキライなのかしら?」

「デネボラ。俺は根拠の無い確信は好かない。お前も知っているだろ?アクベンスの過去を?」

「えぇ。お父様が酷い男で当時その家のメイドだったお母様が無理矢理手込めにされて出来てしまった子。」

「あぁ。しかもだ。その男の妻はアクベンスの母君とアクベンスの命を狙ったそうだ。そのせいで母君が亡くなり、たいそう貴族を恨んでいたみたいだ。」

 確かにカウス様のお父様のアルカブ様のご命令で彼女を捕らえた時も大変だった。

「そのアクベンスが、若に付き従う訳がない。力を手にしたら若を害するかもしれない。なのに、何故若はアクベンスを信頼する?」

「スバル。貴方はお屋敷に連れていったときのアクベンスの目を見なかったのかしら?」

「目だと?」

 私の問いにコチラを見るスバル。私もそちらに視線を向ける。

「えぇ。あの時、カウス様の御両親とカウス様を見て羨ましそうに見ていました。
彼女はお父様には愛されず、周りからも貴族の子という事で嫌われていたみたいで、唯一の味方はお母様だけみたいです。そのお母様もも亡くなり、彼女は孤独になってしまった。」

 きっとアクベンスは自分と違い味方が多いカウス様を見て羨ましいと感じてしまったのでしょう。

「私がアクベンスを信頼する理由はそれで十分です。」

 きっとカウス様が信頼する理由も同じのはず。

 ビュン

「キャウッ!!!!」

 視界の端を何かが飛来して振り向いた私のおでこに直撃した弾みで倒れてしまった。…黄金聖衣(ゴールドクロス)ごしでも、ちょっと痛い。

「デェ〜ネェ〜ボォラァ〜。」

 蟹座(キャンサー)の黄金聖衣(ゴールドクロス)をまとったアクベンスが、激怒した態度で詰め寄っていた。

「何、適当、な事を、抜かし、てやがる!!!!俺は、一度だって、母さんを、亡くし、て寂しい、と思った事も、カウスを、見て羨ましい、と思った、事も、ないん、だからな!!!!」

「痛い!痛い!アクベンス!止めて!癖になりそう!スバルも見てないで止めて!」

 アクベンスは倒れ伏す私に何度も何度も踏みつける。その痛みにスバルに助けを求めるが彼は私達を見て微笑んでいるだけだ。数分してやっと、その攻撃を止めてくれた。

「………でも、信頼するって、言ってくれてありがとう。デネボラ。」

「どういたしまして。アクベンス。」

 ボソッと洩らした呟きに笑顔で返したら、再び暴力をふるわれた。グスン。


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