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真・かまいたちの夜 if
11月23日事件解決




 僕は警察に運ばれていく4人の遺体を見てやるせない気持ちになっていた。もっと早く気づいていたら死ななくてすんだんじゃないか? そう思うと、申し訳ない気持ちになる。特に池谷さん。彼には奥さんや子供と幸せな時間もあっただろうに。
そんなことを考えていたら、誰かに背中を叩かれた。

「顔を上げて。くよくよしても始まらないよ。
悪いのはあの男だし、君はさとみ達を救ってくれた。それで十分だよ。」

 親友を失って辛いはずなのに、励ましてくれたさとみちゃんの言葉に僕は頭を下げていた。

「.........坂巻さん。」

 両手に手錠をかけられた鵜飼オーナー、いや、名前も知らない男は僕に頭を下げていた。

「.........ありがとうございます。止めていただいて。」
「そういえば、快人君。なんでこの人が犯人だと気づいたの?」

 首をかしげ問いかける京香ちゃんの問いに僕は口を開いた。

「きっかけは雪乃ちゃん。」

 そう言って黒井さん共々毛布にくるまって白湯を飲んでる雪乃ちゃんに視線を向けた。

「あの時は気づかなかったけど、雪乃ちゃん。君はブラウニーの従業員でしょ?」

 その問いに雪乃ちゃんは頷いて答えた。

「でも、そんなこと一言も言わなかったよ?」
「単に言いそびれただけじゃないかな?
そして、食堂にいる皆の前であなた誰? と問いかけた。初対面の人間にたいして誰と問いかける従業員はいないよ。見知った人がいる場所に関係無い人がいて鍋を振るっていたからあなた誰? と問いかけたんだ。」
「でも、快人君。雪乃ちゃんがいた場所からキッチンはどうやっても見れないけど?」
「窓ガラスだよ。外が暗くなった窓ガラスが鏡の代わりになったんだ。」
「私からもよいだろうか? 女湯から男湯にどうやって移動したんだね? しかもあの時、この男にはアリバイがあっただろう?
それに、6時頃から食事の用意をしていただろう?」

神林さんがアゴヒゲを撫でながら問いかける。

「アリバイなんて意味ないですよ。1つめのアリバイは殺害したのは、神林さんが来る直前で、神林さんが目撃した人物は雪乃ちゃんです。
雪乃ちゃん。ここに赤い防寒着っていくつあるの?」
「私と叔母さんの二人分あります。」
「雪乃ちゃんは。姿の見えないオーナーを探して外に出ようとしたんだ。そこを神林さんに目撃したのでしょう。
そして、遺体の移動トリックなんてありません。この人は遺体を動かしてないですから。」
「ん? どういう意味だね?」

意味を理解出来なかったのか首をかしげていた。

「雪乃ちゃんが遺体を発見してから僕が女湯に駆け込んだときには遺体は有りませんでした。あの遺体は重く数人がかりでようやく運べた上にオーモリ君以外にさきまわりできた人はいません。
となると、雪乃ちゃんは男湯の掃除をしに行って赤城さんの遺体を見つけたんだ。従業員であることを知らない僕達は女湯に駆け込んでしまった。それが遺体移動の真相です。」

 そこまで言ってから、彼に向き直った。

「ただ、僕が推理出来たのはそこまで。あなたが何者で何故オーナーだろうと思われる赤城さんを殺害したのか? オーモリ君まで殺害したのか? その辺は全くわかりません。
教えてくれませんか?」

僕の問いに彼は口を開いた。

「私の名前は佐々木優といいます。
夢野未来という名前で小説を書いています。」

 その言葉に僕はショックを隠せなかった。名作を書いた覆面小説家で最近では、ノベルズ大賞に受賞したことで有名な人で僕の目標でもあった。その人が犯人だった事が衝撃だった。

「何故オーナーのフリを? 人殺しは避けれないとしても逃げればあなたを糾弾することもなかったのに。」
「坂巻さんは私のファンだったのですか? 申し訳ありません。
ノベルズ大賞を受賞した時の作品。あれはここのオーナーの鵜飼芳江(うかいよしえ)の作品の盗作だったんです。
彼女とは交際していた時期に互いの作品をプレゼントしあった際に芳江から受け取った作品。それが白銅だったんです。
書いているときはその事に気づかなかったのてすが、芳江からこの手紙を受け取って初めて気づいたのです。」

そう言ってポケットから手紙を取り出したけど内容はノベルズ大賞を受賞したことに対する祝いの言葉と用事がなかったら来てほしいというものだ。

「謝罪のために赴いたのですが、芳江が私を脅迫していると誤解して、脅しにはくっさないぞ! と言う意思表示のために軽く突き飛ばしたのです。そしたら、足を滑らせた芳江は岩に頭を打ち付けて亡くなってしまったんです。
逃げようにも、盗作の証拠は金庫に入っているのですが、暗証番号がわからない。そうこうしているうちに神林さん達が来てしまったんです。咄嗟に変装してオーナーのフリをするしか有りませんでした。」
「………雅也さんを殺したのは何故?」
「不運の結果です。池谷さんは私が落とした招待状を拾っていました。
そして業界の中で佐々木優という名前は広まってました。
佐々木優は誰なのか? と問われもし、夢野未来が殺人犯だとバレたら私の身が危なくなる! と咄嗟にその場にあった火かき棒で池谷さんを殴り殺し持っていた招待状を奪ったんです。」

京香ちゃんの問いに佐々木はうつむいて答えた。

「オーモリ君を殺害したのは?」
「あの時、金庫を開けようと悪戦苦闘中でした。その光景を目撃され、私の正体に気づかれる前に殺害しました。」

今にして思えば、誤魔化しようは他にもあったですけどね。と、そう答えていた。確かに暗証番号をメモしたものを紛失しただのと答えれば、その場の誤魔化しはできていたかもしれない。

「皆さんに私の顔を覚えられてます。
その場は逃げれたとしても、芳江の知人の私に捜査の手が届くのも時間の問題です。逃れるには皆殺しするしか有りませんでした。その時には既に4人もの人を殺害していたこと、私の勘違いで芳江を殺した事でもう歯止めが効かなかったのです。坂巻さんに止めていただけなければ私は皆さんを殺していたでしょう。本当にありがとうございました。」

佐々木優はそう言って頭を下げて警察に連行されていった。


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あきゅろす。
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