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真・かまいたちの夜 if
11月22日午後3時



.........タクシーから降りた僕は吹きすさぶ冷気に身を震わせる。そしてジャンパーのジッパーを締め運転手に向かう。

「10分程待って頂けますか?」

 運転手は僕の言葉に頷いたのを見て運転手に案内された卯子酉(うねどり)神社に向かう。僕を迎えた赤い布がはためく光景は異様なものを感じた。

「これは小説に使える。」

 そう思い、デジカメで辺りを撮影する。来た記念で賽銭箱に五円玉を入れて手を合わせる。
良いご縁がありますように。そして、賽銭箱の隣に赤い布が束になっていた。
どうやら想い人を想いながらは左手で布を結ぶと卯子酉がその人との縁を結んでくれるらしい。大学生の頃付き合っていた立花京香(たちばなきょうか)のことを想いながら左手で悪戦苦闘する。そして、しっかり結んでタクシーへと向かう。

「お待たせしました。」
「いえいえ。あれって難しいでしょう?」
「という事は運転手さんも? 良いご縁はありました?」
「それはもう。」

 ニコニコ笑みを浮かべタクシーが発車する。
代わり行く車窓の景色を楽しんでいたら、唐突にタクシーが止まった。
 タクシーから降りた僕はそのペンションを見上げた。
タクシーが走り去ったのを見て、ペンションブラウニーの階段を登ろうとしたとき、車のエンジン音が聞こえる。
―さっきのタクシーが引き返してきた? 忘れ物はしてないはずだけどな?
そう考えていたら、別の車が走って来て階段横の駐車スペースに停車する。僕以外にもお客さんがいるんだ。その車を見つめながらそんなことを考えていたら、

「快人(かいと)君?」

 運転手らしい女性が僕の名前を口にしていた。

「坂巻快人(さかまきかいと)君でしょ?」

 嘘だろ?

「京香ちゃん?」

 思わず、その女性の名前を口にしていた。

「こんなところで奇遇だね? どうしてここに?」
「え、えっと、気ままな一人旅というか、京香ちゃんこそ、どうして?」
「私は雑誌の取材で、」

 京香ちゃんがそこまで口にしたところで、

「おい、京香。」

 見知らぬ男性が荷物をたくさん抱えて車から降りてきた。

「数日の宿泊でどうして家出みたいな大荷物になるんだよ?」
「わかってないなぁ。女の子には荷物がたくさん必要な理由があるんだよ。」
「誰が女の子だ?」

 なんだ、こいつ? 京香ちゃんのなんなんだ?

「.........京香? この人は?」
「大学の頃の友人で坂巻快人君。」
「池谷雅也(いけたにまさや)です。『月刊らんらんとらべる』の編集長やってます。」

 池谷さんはさわやかな笑みを浮かべ握手を求めるが、僕はその手を潰れろと言わんばかりに全力で握りしめるが、非力な握力ではたいしたダメージは与えられないらしい。睨みつける僕の視線に何かを察したらしい池谷さんは京香ちゃんに何かを耳打ちする。
聞こえなかったからわからないけど、次の瞬間京香ちゃんの顔はトマトのように真っ赤な顔になっていた。

「な、な、な、」

 なにかを言おうとしているようだけど魚みたいに口をパクパクさせているだけだ。やがて、深呼吸してから口を開いた。

「なんの話よ?」
「卯子酉神社であんなに必死に結んでいたら未練があるのはもろばれだ。おまけに今の顔はニヤニヤしっぱなしだ。」

 その言葉に京香ちゃんは頬を両手で隠そうとしていた。

「手遅れにならん内に唾つけておいた方が良いぞ。」

 池谷さんはそう言ってから、僕の脇を通りブラウニーの玄関を開けた。後には僕と京香ちゃんが残された。

「さっきの何?」

 何気無いその問いに京香ちゃんの体が震えた。

「な、何でもないよ。早く入ろう。」

 京香ちゃんは、そう言ってから僕の腕に抱きついて引っ張る。その暖かで柔らかな感触に僕の心臓はドクドク言っている。

「いらっしゃいませ。ブラウニーへようこそ。」

 二重扉を抜けたところでオーナーらしい40代の男性が声をかけてきた。

「電話予約した坂巻です。」
「池谷さんのつれの立花です。」
「御待ちしました坂巻様。立花様。私、オーナーの鵜飼と申します。」

 鵜飼オーナーは笑みを浮かべながら、台帳を開いた。
その宿帳には既に何名かの名前が書かれてあった。

「申し訳ありませんが漢字を教えて頂けませんか?」
「坂を登るの坂にとぐろを巻くの巻きです。」
「下の方もお願いします。うっかり宿泊者リストした紛失してしまいまして。」

 忙しいのはわかるけどそれを客に話してよいのだろうか? そう思っていたらら忙しいのを察した京香ちゃんが口を開いた。。

「あの、良ければお手伝いしても良いですか?」

京香ちゃんの言葉に鵜飼オーナーが申し訳なさそうなに頭を下げていた。

「助かります。ありがとうございます。立花様。」
「じゃ、快人君。またあとでね。」

 京香ちゃんはこけしがついている鍵を渡した。そのこけしにかかれている部屋に向かい、部屋のドアにカードが挟まっているのに気づいた。
 何だろう? そう思いながらカードを引き抜くとそこにはこう書かれていた。

『今夜7時のサプライズパーティーをお楽しみに。』

 何故かそのメッセージカードに嫌な胸騒ぎを覚えていた。

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あきゅろす。
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