第二章 揺らぐ心、不確かな絆 其の4 「……貴方も知っている人です」 下手に嘘を付いても、ユアンは簡単に見抜いてしまう。よって、ソラは正直に話す。しかし、言葉は遠回し。だが、勘のいいユアン。これだけの内容で、相手を瞬時に見抜いていた。 「幼馴染か」 「……そうです」 「仲がいい」 「嫌味ですか?」 「そういう意味で、言ってはいない」 「では、どのような……」 「そう、邪険な言い方をしない」 困ったような素振りでそのように言っているが、ユアンの場合は言葉と感情が一致することは少ない。そして今回も、違っていた。ユアンがソラの本音を簡単に見抜いたように、ソラも同じように見抜く。だからといって、ユアンが動揺することは無い。寧ろ、楽しんでいた。 「デートか」 「違います」 「キッパリと否定したな」 ソラの反応が楽しいのか、喉を鳴らして笑う。ソラにしてみれば、どうしてこのような質問を繰り返すのか、理解できなかった。用件があるのなら、早く言ってほしいもの。ユアンが用件も無しに、ソラのもとに訪れるわけがない。よって、黙っているユアンが恐ろしく感じる。 その為、ソラは口を開く。 そして、理由を聞いた。 「今日、僕が見る」 「……えっ!?」 「その方が、いいだろう」 ソラは、即答を避ける。 確かに、ユアンの方がまだいい。他のカイトスとは異なり、多少は手加減をしてくれるからだ。 だが、相手は気に入らない。 何より、弱い部分を見せたくなかった。 「顔色が悪い」 「誰の所為ですか」 「僕に、当たらないでほしい。君をそのようにしたのは、他のカイトス達だ。失礼なことをした」 「謝らないで下さい」 反射的に叫ぶ。 ソラにしてみれば、ユアンにこのようなことを言ってほしくなかった。それに、言われれば言われるほど、自身が惨めに陥っていく。だからこそ、どちらかといえば愚痴を言ってくれる方が有難い。しかし、ユアンはソラの気持ちを踏み躙るかのように、言葉を続ける。 「君達も、人間だ」 「では、何故――」 「愚問だ」 「愚問?」 「周囲が、それを望む。でも、僕は違う」 確かに、その言葉は正しい。ユアンは、カイトスの中では異端に等しい。どちらかといてば、ソラ達に優しい。相談に乗るということはないが、心情を理解しているといっていい。天使と悪魔が、半々――よって、絶対の信頼を置くというのは難しい。現に、ユアンは人体実験を行っている。 [*前へ] [戻る] |