第二章 揺らぐ心、不確かな絆 其の1 イリアはスーパーマーケットの開店と当事に、お菓子の材料を買い込んでいく。何より、ソラにお菓子の作り方を教えて貰わないといけない。失敗を前提にということで、対象に買い込んでいく。 全員に、美味しいお菓子を食べてもらいたい。それに高い評価を貰いたいという気持ちが空回りし、イリアは半分暴走状態に陥っていた。それにより、あれもこれもと次々と選びカートの上に乗せていく。値段に、糸目を付けていない。よって、余計な物まで買ってしまう。 数十分後―― スーパーマーケットから出た時のイリアの両手には、大量の荷物が詰められた袋が握られていた。一体、どれくらいの量を作るというのか。イリアは「加減」という言葉を知らなかった。意気揚々とソラの自宅へ向かう。そして、美味しいお菓子を作ろうと決意をする。 ◇◆◇◆◇◆ ベッドで横になっていたソラは、イリアの訪問に目を丸くする。しかし以前の出来事を考えると、無視を決め込むことはできない。一方イリアは、以前の出来事を全く覚えていない。それにより、外で早くソラが出てこないかいいそいそと待っていた。こうなると、流石に出ないわけにもいかない。 ソラは眠そうな表情を浮かべつつ、扉を開く。そして盛大な溜息をつくと、イリアの顔を凝視した。その後、ソラは口をつむぐ。すると沈黙に堪り兼ねたイリアが、先に口を開いた。 「おはよう」 「……うん」 「元気?」 刹那、ソラの表情が更に歪む。そう、今のソラにこの言葉が禁句に等しい。それを雰囲気で察したイリアは、慌てて取り繕っていく。しかし、それでソラの機嫌が直るわけがない。 「で、何?」 「入っていい?」 「別に」 素っ気無く返事を返すと、イリアを自宅の中へ通す。この場で断ったとしても、イリアは勝手に上がり込んでくる。それなら不愉快な感情が湧いてくる前に、イリアを部屋に入れてしまえばいい。幼馴染なので、強引の一面を深く理解している。その為、気苦労が耐えない。 「それは?」 「料理を教えて欲しいの」 「誰が?」 「ソラに」 再び、二人の間に沈黙が走った。そしてソラは、驚いた表情を浮かべている。しかし、イリアも引けない部分を持っている。「皆の為に――」その一心で、懸命にソラに頼んでいく。 だが―― 「ちょっと、無理だな」 ソラは困ったような口調で、答えていく。しかし、決して怒っているというわけではない。ソラにしてみれば、このように料理を教えて欲しいと頼むこと自体、珍しく驚きの対象であったからだ。しかし、無理なものは無理。それは、ソラの身体状況が深く関係していた。 「今、これなんだよ」 「あっ! うん」 「それなら――」 現在、ソラの体調は良い方ではない。寧ろ、悪いといって過言ではない。先日、ソラは命を失うに等しい状況に追い込まれた。全ては、関係者の責任。そう、 ソラは数ヶ月前より、検査を受けるようにとカイトスから打診があった。しかし今までのらりくらりとかわしてきたのだが、先日カイトスに捕まり検査を受ける羽目となってしまう。 [次へ#] [戻る] |