第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の5
女は、何故――
いまいち、理解できない。
それに、ユアンが好きになる女性は単純明快。内面が美しく、料理が上手い。それに、家事ができれば完璧だという。外見は、二の次。特に、化粧が厚い女性は嫌い。何より、臭くて暑苦しい。それに、化粧を落とした後が別人ということもザラではない。そう、化粧は女性を偽る。
どうして、外見ばかり弄くる。
ユアンの本音は、このようなもの。
それなら、イリアは――
ユアンは、助手席に座っているイリアを一瞥する。彼女は、今日の為に気合を入れて化粧をしていた。しかし今まで出会ってきた人物の中では、落ち着きを保っている。だが、彼女は確実に変化していた。
(あの頃より……)
ふと、過去の出来事を思い出す。
イリアとの出会いは、今から三年前。ユアンがいつものように、アカデミーに用事があって行った時だ。
運命の出会いというのは大げさな言い方であったが、それだけ深い「何か」が、其処に存在していた。無論、イリアは気付いていない。それはユアン側に関係している出来事であって、イリアには関係ない。しかし、混じり合った運命は確実に互いに影響を及ぼしていた。
そう、このように一緒の車に乗っている。
これこそ、運命の賜物だ。
実に、運命は面白い。
それにより、その運命にユアンは苦笑してしまう。
(しかし……そう……)
だが、心の底から喜ぶことはできないでいた。それは、蟠りか。それとも、別の物か。ユアンは、溜息を漏らす。
「どうしましたか?」
「いや、別に――」
「心配です」
「平気だ」
「仕事が、忙しいのですか?」
相手が憧れの人物ということで、本人が「平気」と言っても、簡単に受け入れることはしない。それどころか過度に心配してしまい、本当に大丈夫か聞いていく。無論、悪気はない。しかし、ユアンは内心「いい加減にしてほしい」という気持ちが、無いわけではなかった。
本当に、女性という生き物は――
勿論、ユアンの周囲に群がってくる女性が全ての価値観を示しているわけではないが、そのような人物ばかりが集まってくると、彼女達が女性の本質を表していると勘違いしてしまう。
それに、しつこいのは煩い。
正直、迷惑だった。
しかし、邪険に扱ってはいけない。女性の心は繊細で、簡単に壊れてしまうほど脆いという。それにより、取り扱いは十分に注意しないといけない。道具に等しい扱い方。苦笑以前に、疲れてしまう。
だが、ユアンは笑顔を崩さない。
流石、カリスマ性が高い人物。外に表す部分を相手によって作り変えていくのは、お手の物。
それにより、イリアと普通に会話を続けている。
「ランフォード君は、優しい」
「そうですか!」
「ああ、そうだね」
「……嬉しいです」
「そうなのかな?」
「はい。ラドック博士にそのように言われますと、嬉しいです。その……褒められているようで」
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