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第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の15

 タツキは、何故そのようなことを――

 しかし、クリスから明確な答えは得られない。何せ、相手はタツキ。その頭脳を理解できる人間は、まずいない。

「オレは、先に行きます」

「お、おい。一緒に――」

「これ以上、タツキのことはいいです」

「そ、そうだな」

 タツキの過去を語っていて、気分が悪くなってしまった。当初は、ソラを車に乗せて永遠と語ろうと考えていた。しかし衝撃は、自身へと返って来た。そして、精神を深く抉っていく。それにより、車に乗せるということを諦めた。下手すれば、互いに自滅してしまう。

「では、タツキの家で」

「時間では、ソラが先か」

「混雑する、時間ですからね」

「先に着いたら、タツキに連絡して欲しい」

「わかりました。それでは――」

 それは、一時的な別れの挨拶。ソラはバイクに跨り、クリスは車に乗る。そして、それぞれの方法を取り目的地へ向かった。




「――という訳です」

 タツキの自宅に到着したと同時に、ソラはクリスと交わした約束に付いて話していく。最初は目を丸くしていたタツキであったが、素直に受け入れる。いや、彼女は受け入れるという選択しかない。何より、ソラの訪れは嬉しい。両手を広げて抱き締めてしまいたいが、何とか堪えた。

 今は、ソラの手料理を食べたい。可愛いという愛情表現は、後ですればいい。しかし、その表現は時として暴走する。タツキが手加減をしなければ、ソラの骨は折れてしまうだろう。

 ソラは、本能的に危険を察する。それに続き、一歩後退した。そして内心、クリスの到着を願う。

「あら、どうしたの」

「な、何でもないです」

 その時、クリスとの会話を思い出す。それは、悪夢に等しい内容。気分が悪いということはないが、想像していいものではない。何故、今思い出したのか。ソラの頭の中は、混乱してしまう。話を聞かなかった方がいい――激しく後悔してしまうが、逃げ出すことはできない。

 クリスは、なかなか到着しない。渋滞に捕まっているのか、内心「早く」と、ソラは思う。カイトスに付いて相談を行っているのならいい。しかし、今回は違う。下手したら、捕獲の対象だ。

「どうしたの?」

「ハートラ博士、遅いですね」

「ねえ、クリスのことそのように呼んでいるの?」

「いけないかな」

「クリスは、博士というタイプじゃないわ。だって、おかしいわよ。彼って、不真面目なのよ」

 大笑いしながら、タツキはクリスを貶していく。しかし、他人を貶す権利はない。タツキの生活スタイルは、中年親父。料理や掃除は、他人任せ。そして、洗濯物は溜め込んでしまう。

 クリスが言うように「女性なら――」しかし馬耳東風のタツキに、何を言っても無駄であった。

「ハートラ博士の方が、立派――」

「何か言ったかしら?」


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