第二章 揺らぐ心、不確かな絆 其の4 「そういう問題か」 「深く考えすぎよ」 このような発言を聞くところ、タツキに生ものの生き物を飼わせるのは危険と判断できる。もし飼育した場合、いつもの放任主義で殺してしまう確立が高い。そう考えると、恐ろしい。 「マロンに会いたければ、呼べば来ると思うわ」 「いや、いい」 「そう。なら、話をはじめましょう」 「で、何処へ」 「少しは、自分で考えなさい」 だがそのように言われて、素直に従うクリスではない。何処かへ行くと言い出したのはタツキであり、その発言者が適当な発言を繰り返すのはいかがなものであった。その為、反論してしまう。 「タツキが決めないで、どうする」 「目的地を決めるのって、結構難しいのよ。それぞれの人物に、好みというものがあるでしょ。後で、何を言われるのかわかったものではないし……それに、トラブルになったら面倒でしょ。アタシって、結構繊細な心を持っているのよ。だから、何も言わないでほしいわ」 「繊細って……」 「いいじゃないの」 「まあ……そうだな」 いい加減なことを言っていたタツキであったが、それなりに考えていた。それは褒められる一面であったが、頑張っているということが外に表れない。つまり、日頃の行いが悪すぎた。 タツキ曰く「のんびりとしたい」らしい。その意見に関しては、クリスも賛成であった。何かと忙しい毎日。職種は違えど、二人は仕事に追われて生活を送っている。たまの休息は、必要だ。 「それなら、食事にでも行くか? 綺麗な風景を見ながら、のんびりとするのも悪くはない」 「それが、一番かしら」 「ついでに、一泊してくるか」 「久し振りに、エステに通いたいわ」 「お、おい」 「いいじゃないの」 短い会話であったが、内容は決定した。あとは、目的地。するとタツキは、前々から泊まってみたいと思っていたホテルの名を上げた。其処は、三ツ星ホテル。無論、クリスもそのホテルを知っている。 「高いな」 「全員で出せば、大丈夫よ」 「まあ、そうだな。うん? 全員ってことは、俺とお前と……いいのか? 相手は、何も知らない」 「ソラ君は、優しいわ」 微笑ながらそのように言うタツキであったが、額には汗が滲み出ていた。どうやらその点を考えずに決めてしまったらしく、内心どうすればいいのか悩んでいた。いくらソラとはいえ、金銭が絡む問題を簡単に受け入れることはできない。ましてや、三ツ星ホテル。場所が悪すぎた。 「俺は、言わない」 「提案したのは、貴方でしょ?」 「ホテル名を上げたのは、タツキだ。俺は別に、普通のホテルでも構わない。食事だけ豪勢ならいいんだ」 鋭い指摘に、タツキは口をつむぐ。いつもなら強引に話しを推し進めてしまうが、今回の一件には、ソラが絡んでいた。タツキは暫く唸り声を発していると、珍しいことに素直に謝ってきた。どうやら、自ら折れるということを選択したらしい。どのように足掻いても、分が悪い。 [*前へ][次へ#] [戻る] |