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第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の3

 今回は、ソラについての話を行う。無論、その人物はタツキのお気に入り。油断すれば、暴力を振るわれてしまう。それを危惧したクリスはマンゴープリンを用意し、身の安全を図った。しかしこれはあくまでも保険であって、タツキの動きは運任せ。神に祈るしかない。

 子供のような一面を有しているタツキであったが、科学者(カイトス)としては優秀であった。人間、一方が素晴らしいと片方が乱れる。それを見事に証明したのがタツキであり、クリスは悩みの種であった。

 しかし、古くからの付き合い。そして現代の実情を語れる、数少ない人物。それらを総合すると別れるに別れられず、このように我慢して付き合っている。だが、苦手であって嫌いではない。

「で、用事とは?」

「旅行のこと」

「ああ、場所を決めていなかったな」

「そういうこと」

 落としたコーヒーをマグカップに注ぐと、それをテーブルの上に置いていく。ミルクと砂糖は好みなので、この時は入れない。長い付き合いとはいえ、ソラやカディオのように互いの好みは知らない。

「海は、行かないぞ」

「あれは、冗談よ」

「タツキの冗談は、冗談とは思えない。時折、本気で物事を遂行するからな。他人に迷惑を掛けるな」

 信じられないタツキの行動に愚痴をこぼすクリスであったが、タツキはその言葉を軽く受け流す。今はこのようなことを言い合うのではなく、目的の場所を決めなければいけない。

「これ、頂くわ」

「どうぞ。どうせ、土産だ」

 タツキはソファーに腰掛けると、クリスが持ってきたマンゴープリンを食べはじめる。マンゴー自体の甘みを生かした菓子に、一口食べた瞬間、タツキの頬が緩み機嫌が良くなっていく。

 しかし、クリスは食べようとはしない。甘い物に関しては、好んで食べることはしないからだ。ブラックコーヒーを飲み、タツキが食べ終えるのを待つ。だが、そう簡単に終わることはない。

 タツキは好きな食べ物を、長い時間を掛けて食べ続ける性格の持ち主であった。それがタツキの特徴であり、クリスはそのことを理解していた。だからこそ、食べ終わるのを静かに待つ。クリスは足を組み、寛ぐ。完全に、自身の自宅と同じ。これこそ、長く付き合っている証拠だ。

「あれ? マロンは」

「何処かにいると思うわ」

 相手がロボットということで、タツキは放任主義に近い状況で飼っている。これに関して「生き物ではない」という意味合いから、文句を言う筋合いがないが、マロンは犬に代わりない。

 ペットというのなら、たとえロボットであろうとも、愛情を持って世話をするのが飼い主の務め。それを適当に飼育しているとは、愛情を注ぐ対象物に偏りがあると思ってしまう。

 現に、偏りはあった。それを見事に証明するのが、ソラの一件。母親以上の愛情深さを示し、彼のことを心配している。タツキ自身は「姉のように」と言っているが、傍から見れば立派な親子だ。

 何より、ソラが絡むと性格が変わってしまう。たとえ相手がクリスであろうとも、容赦しない。だがこの場合は、手加減をする。しかし相手が見ず知らずの他人であり、気に入らない人物であったら――

 その時は、相手に「ご愁傷様」と言葉を送ってしまうほど、想像に絶する行為が行われる。

「可哀想だな」

「大丈夫よ。マロンは、シッカリとしているわ」


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