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第一章 異端の力
其の2

 カディオは「どのような女性でも優しく」というのがモットーであるが、あまりにも常識離れした相手の場合は、考えを改める。カディオがイリアに持つ印象は、かなり良かった。しかし、それも崩れつつある。

「オレだけだよ」

「まあ、他人にやられたら困るな」

「もしやったら、恥を捨てたようなものさ」

「厳しいな、相変わらず」

 自分自身に厳しい一面を持つソラは、他人にそれを強要する時がある。しかし、決して押し付けではない。それが相手の為だと思って行うことであるが、それを理解してくれるのは仲間のみ。

 無論、イリアは論外。

「必然的に、厳しくもなるよ」

「イリアちゃんは、知っているのか?」

「知らない。話してもいないし。それに、話す必要もない」

 ソラの過去を掘り起こしてしまうと判断したカディオは咳払いをすると、暗い話を横にずらすことにする。このまま同じ話を続けると、互いの気分が滅入ってしまう。暗い話の逆といえば明るい話。そう考えたカディオは、ソラを驚かす言葉を口にする。それは、爆弾発言に等しかった。

「女っていいよな」

 次の瞬間、ソラの時間が止まった。何の前触れもなく言われた言葉に、返す言葉がない。ただソラは、不振な物を見詰めるような視線を向けた。一方カディオは瞳を輝かせ、真剣さをアピールする。

「……気楽だね」

「俺は、真剣さ。この恋も、実らしてやる」

 恋心を抱く。それは当たり前の行為であって、人にとっては必然的な行為。しかし、全てにそれが当て嵌まるとは限らない。ソラはそれを一番よく知っているので、敢て口には出さなかった。

 カディオはソラの気持ちを察したのか、口調は先程と変わらない。此処で、ソラを同情するのは簡単だ。しかし、それは本当の友情ではない。知っていながら、知らないふりをする。それは難しいことであるが、それができる者は真の友人であろう。まさにカディオは、それができた。

 しかし、時と場合によって使い分けが必要だ。カディオは、見事にそれを使い分けている。無論、ソラはそれに気付いているが感謝を言葉として表さない。もし言葉で表してしまったら、関係が崩れてしまう。

 カディオはイリアに関しての話の時は、同調の意志を表す。しかしソラ自身のことになると話の流れを変え、知らないフリをした。ソラが思っている以上に、曲者の一面を有しているカディオ。「ガハハハ」と笑うその表情の裏に何を思っているのか、時々わからないことがある。

 だが、良き友人というのは間違いない。それは変わらず、この先も続いていくだろう。二人は、それを望んでいる。何でも話すことができるのは、素晴らしいことだ。それは、イリアでは敵わない。

「今回で、連戦連破は終わりだ」

「あれ? この前、一回は成功したと言っていなかったか。あれは、嘘だったのかよ。お前は……」

「いや、成功したと思っていた。でも、後でふられたんだよ。本当に、最初はわからなかったんだ」

「お前が、気付かなかっただけだよ」

 友人関係に関しては真面目な一面を見せるカディオであったが、恋愛に関しては「恋多き男」という名前が付けられている。今回の一目惚れといい、意外にも告白回数は多かった。

 毎回全力投球で挑むも、成功した試しはない。流石に何回もふられるわけにはいかないと頑張っているようだが、果たして成功するか――カディオがこのように頑張っていることを知っているのは、実はごく一部。表立って表れないだけであって、影では苦労をしていた。


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