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第一章 異端の力
其の15

「何だか、自信が湧いてきました」

「どのような意味なのかわからないけど、何事も頑張ることは大切だよ。無論、努力もだが」

「だって、ソラお前だって……」

 話を振ろうと横に立つソラを見た瞬間、そこで言葉が途切れる。視線の先にあるソラの表情が、先程と異なっていたからだ。ユアンと出会った時に見せていた刺々しい雰囲気はなく、穏やかであった。

「どうした?」

「いた」

「いた?」

 簡略的に返された言葉にカディオは首を傾げると、ソラの視線の先に何があるのか確かめる。その瞬間、理由が判明した。それは、遠くにイリアがいたのだ。偶然ともとれる出会いに、カディオは思わず声を上げる。そして大声でイリアの名を呼び、此方に来るように促す。

「……お前な」

「まあ、いいじゃないか」

「恥ずかしいだろ」

「そんなことは、関係ない」

 カディオの大声に驚いたイリアは足を止め、此方を見つめる。一瞬、行くのを躊躇ったのか周囲にいた者達と何やら会話をしていた。しかし名前を呼ぶ相手がカディオだとわかると、駆け足で此方に向かってくる。

「ど、どうして此処に……」

「遊びに来た」

「そうなのですか」

「うん。元気そうだ」

「はい。何とか元気にやっています。カディオさんもお元気そうで、良かったです。以前は、ありがとうございます」

 イリアが自分の名前を覚えていてくれたことに舞い上がり、ソラにそのことを報告する。だが、すぐ隣にいるソラは説明されずともわかっている。その為「煩い」と言葉を返し、横を向いてしまう。

「ソラ、そういう言い方は……」

「そうだぞー。彼女の言う通りだ」

 今までの鬱憤晴らしをしているのか、ここぞとばかりにソラを攻め立てる。しかし、ソラは聞く耳を持たない。出会いたくない人物に出会ってしまい、尚且つ説教を長々と聞かされた。お陰でソラの機嫌が、ますます悪くなってしまう。それにこれで平然といられたら、その人物は聖人だ。

「まあ、あいつのことはいいとして……俺達は、イリアちゃんの顔を見る為にアカデミーに来たんだよ」

「わ、私のですか?」

「本当は、あいつの為なんだけどね」

 後ろを向いてしまったソラを見詰めつつ、アカデミーに来た経緯を話していく。その内容に聞き耳を立てていたユアンは、思わず噴出してしまう。するとユアンの存在に気付いたイリアは、一瞬にして顔を赤く染めてしまう。そして裏返った声音で、相手の名前を叫んでいた。

「ラ、ラドック博士」

「こんにちは、ランフォード君」

「あ、あの……あの件のことですが……」

「例のことは、ゆっくりで構わない。まずは、卒業のことを考えよう。このことで留年になったら困る」

 自分の卒業のことを心配してくれていることに、イリアは顔を赤く染めてしまう。そして。尊敬の眼差しを向けていた。優しい人物――どうやらイリアの頭の中には、この考えしかない。

「話の腰を折って悪いが、彼を借りていく」


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あきゅろす。
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