第一章 異端の力
其の14
「女って怖いな」
「だから、言っただろ」
「お、おう」
二面性が激しすぎる女子生徒に、カディオは二度とナンパをしないと心の底から誓う。あの時ナンパが成功をしたら、後が大変だった。恋は一途――この一件で、カディオは多くを学んだ。
「女は、魔物だよ」
「えっ!?」
囁くように発せられた言葉に、二人は驚いてしまう。それは、ユアンが言ったとは思えない内容。だが、納得できる部分は大きい。このように、裏と表をハッキリと見せ付けられたのだから。それに、数多くの女性を見てきたユアンが言った言葉。かなり信憑性は高い。
「これで、大丈夫だろう。君達のことも話しておいたから、何も言わないと思うよ。ただ、保障はできない」
止めとも言える言葉に、カディオは身体を震わす。女は魔物――その言葉が証明された場合、彼女達はユアンの言葉であろうとも逆らう。そして、容赦ない攻撃を仕掛けるだろう。大勢の女性からの一斉攻撃。さすがに女好きのカディオであっても、それだけは御免被る。
「なら、行きましょう」
保障ができないというのなら、立ち去った方がいい。そう判断したソラは、珍しくユアンに提案を述べていた。
「そうだね、ソラ君」
そう一言だけ述べると女子生徒達の視線を感じつつ、その場から離れることにした。ソラは先を歩くユアンの背を見詰めながら、彼という人物について考えはじめる。しかし、明確な答えは見つからない。ただ、ひとつだけ言えることがあった。それは、彼に抱いている感情だ。
――嫌いだ。
だが、それがいつからなのかわからない。
◇◆◇◆◇◆
ユアンの案内により、無事に校舎に到着をすることができた。カディオはそのことに礼を言うも、ソラは何も言わない。しかしそのことに、注意がされることはなかった。素っ気無い態度をするということをはじめからわかっていたのか、特に何かを言うことはしない。
「残念ながら、彼女がいる場所まではわからない。これから先は、自分達で捜してほしいな」
「そうですよね」
「そう言えば、聞いていなかった。何故、幼馴染に会いに来たのかな? 此処は、態々来るような場所ではない」
「それはですね――」
案内してくれた例とばかりに、カディオはベラベラと喋っていく。噛まずに喋れるものだと感心してしまうほど、流暢な喋りであった。それも、十分間。疲れを知らない体質なのか、息切れもしていない。
「なるほど。もう、そんな時期か」
「ラドック博士は人気者ですから、さぞかしもてるでしょうね。本当に、羨ましいことですよ」
「それが、彼女はいないんだよ。仕事が忙しい所為か、なかなか作る暇がなくてね。それに、色好みが激しい」
「う、嘘ですよね!」
彼女がいると思っていたカディオにとって、それは衝撃的な内容であった。ユアンに彼女がいない――連戦連敗中の彼にとって、これはどんなに励ましになったのだろうか。この言葉により、過去に負った傷が癒えていく。それと同時に、何人もの人間と付き合った経験がある自身の方が上だと錯覚した。
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