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第一章 異端の力
其の12

 その瞬間、不快な表情を浮かべる。

「また貴女達なの?」

「ふん、煩いのが来たわ」

 無論、この二人もクラスメイトの関係にある。しかし、認めたいと思う生徒は果たして何人いるだろう。現にイリアに声を掛けてきた生徒も、嫌悪感を漂わせていた。話に割って入ってきた生徒に対し、周囲は安堵の溜息を漏らす。どうやら、誰かが助けに入るのを互いに待っていたようだ。

「こんな所でかつあげなんて、何を考えているの。全く、意味不明の行動としか思えないわ」

「人を悪者にしないでよ」

「そうよ。私達は、借り物をしているのだから」

 それは、明らかに自身の言葉を正当化しようとしていた。その瞬間、大勢の生徒からヒソヒソとした話し声が聞こえてくる。どうやらその図太い神経に、呆れられたというより唖然となってしまったようだ。悪びれた様子のない二人に、周囲が一斉に同調するかのように溜息をもらす。

「あのね。借り物をするなら、相手はこんなに嫌な顔はしないでしょ。イリア、泣いているわよ」

「人それぞれよ」

「また、怒られるわね」

 卒業が迫っているというのにこのようなマイナス行動を起こすとは、呆れて言葉も出ない。いや、その前に卒業ができるか危ない状況。今回の一件で、ますます卒業が遠のくだろう。

 このまま、アカデミーに居座る。誰かに頼っての学園生活を続けるのなら、その可能性も出てきた。

 しかし、アカデミー側がそれを許すか。生徒達への見せしめという形で数年は留年というのは考えられるが、それにも限度があった。つまり今回のような行為を平気で起こす生徒を、長年置いておくのは危険すぎる。今のところ裁判まで発展した事件は一件もないが、気が荒い二人。可能性は無きにしも非ず。

「カイトスの夢が遠のくわね」

「何がわかるというの?」

「わかるわよ。そんなことばかりして、真面目に勉強をしていないから。人に無理矢理借りて提出。将来、そんなことはできないわよ」

「その時はその時で、別の方法を考えるからいいのよ。そうやってきて、不自由はなかったもの」

 今が良ければ、それでいい。何ともお気楽な考えに、未来設計の甘さが露呈する。イリアのクラスメイト達は額に手を当て、頭を振るう。どうやら、これ以上話す言葉が見つからないようだ。何を言っても無駄であった。そう諦めていたが、あることを思い出し追求する。

「ねえ、分野が違うでしょ」

「何よ、分野って」

「二人が目指している分野と、イリアが研究している分野よ。それに、貴女達は真面目に研究をしていない。研究していないのに、それ関連をレポートで提出する。おかしいとは思ったことはないの?」

 的確な追求に、珍しく反論が返ってこない。二人が真面目に研究を行っていないというのは、ある意味で有名なことであった。その二人が研究データを提出した場合、怪しいと思うのが普通。しかし、今まで平然と行ってきた。然も普通に、研究を行っているかのように。

「無断早退に、講義は勝手に休む。それに、他人のデータを盗作。ここまでくると、犯罪に近いと思わないの? 今まで何もなかったので安心していたようだけど、このようなことまでして……どうなるのか、わかっているの? 教授達だって、絶対に許さないと思うわ」


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あきゅろす。
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