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第一章 異端の力
其の14

「やはり、何かあったようだね」

「そ、そんなことはありません」

「聞かないようにと言ったけど、そんな顔をされると心配になる。僕が悪いことをしたように思えてね」

「本当に、大丈夫です」

「それならいい。もし困ったことがあったら、相談に乗る。何より、溜めているのは身体に悪い」

 その言葉に、イリアの表情が一瞬にして明るくなる。「相談に乗る」そう言われただけで、嬉しかったか。流石、若い身で高い地位についているだけのことはある。正直、クラスメイトより信頼できた。その時、急に話の内容が変えられた。内容は、イリアを驚かすものであった。

「これは噂程度に聞いた話だけど、君には幼馴染みがいるそうだね。それは、本当のところかな」

(まさか、あの二人が……)

 ユアンから視線を外し、心の中で怒る。友人達が話し好きだということは知っていたが、まさか一日で此処まで広がるとは――いや、一日ということはあり得ない。そう考えると、かなり前から「イリアに幼馴染がいる」と、言い触らしたことになるだろう。彼女達は、口が軽い。

 それに、興味を抱けば猪突猛進型になる。

 もしかしたらソラのことを話さずとも、最初から調べはついていた。内心、そう考えてしまう。ハッキングができるのなら、可能性には無きにしも非ず。シャトルで言ってしまったことは、ある意味誘導訊問だったに違いない。そうなると、友人達はそちらの道に進んだ方が適正だろう。

「本当なのか?」

「……本当です。でも、私達は幼馴染の関係で……それに……別に、そういう関係ではないです」

 ユアンの前で怒っている表情を見せるわけにはいかないと、ぎこちない笑顔を作る。すると懸命に否定をしているイリアの姿にユアンは、声を上げて笑う。しかし、イリアは笑われて恥かしいという感情はなかった。はじめて見た素敵な笑顔に、逆に安心感を抱いたからだ。

「そうなのか。幼馴染という関係は、素敵だと思う。ところで、幼馴染みの名前は何かな? やはり、同じアカデミーの生徒かな? これはプライベートのことだから、嫌なら言わなくていい」

「そんなことはないです。彼の名前は、ソラといいます。えーっと……その……言いづらいのですが、彼は能力者です」

「ああ、彼か」

「知っているのですか?」

「勿論。有名だからね」

「そ、そうなのですか」

 ラタトスクと聞いて驚くと思っていたが、意外な反応に逆に驚いてしまう。だがユアンは能力の研究もしていることを思い出し、イリアは納得した。生物研究の他に、能力研究も行っているユアン。その知識と教養の高さに、改めて尊敬の念を抱く。だからこそ、今の地位にいるのだ。

「まさか、ご迷惑をかけているのでしょうか? ソラって真面目そうに見えるけどマイペースなところがあります。それに、尚且つ朝に弱いんです。だから、朝からの付き合いはでききません。それならまだしも、他人の気持ちに鈍感で……小さい頃から、そういう部分がありました」

「酷い言われようだな。安心していい。そんなことはない。僕がこの研究の他、能力研究にも携わっていること知っているかな? 彼は僕が担当をしていて、それで知っているんだ」

 何かあると思い心配していたが、ソラの担当だと知って安心する。だがその前に、尊敬する博士がソラの担当だということに驚く。まさか、プライベートのことを話しているのではないのか……もしそうであれば、幼馴染であるイリアのことも話している可能性が高い。


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