第一章 異端の力
其の12
酷い内容であるが、大勢と少数。明らかに、後者が不利。互いに理解を深めるには、相当な時間と労力が必要となってしまう。果たして、両者が歩み寄るということがあるのだろうか――
それは、大勢の人間の気持ちが変わらない限り決してない。そして、今はまだ無理だった。
しかし、それがいつかは不明だ。
二人が向かった所は、研究が進められている惑星だった。様々な設備が整えられ、多くの科学者も暮らしていた。だがそれが油断する原因となり、野生生物に襲われ大変な目に遭う。
ソラの力によって野生生物を倒すことができたが、力の使いすぎで近隣の村に迷惑をかけてしまった。ソラの機転で大事には至らなかったが、修復の手伝いをさせられたという苦い経験がある。
それ以降ソラに付いて来てほしいと頼んでも、首を縦に振らなくなった。旅行くらいなら、縦に振ってくれるだろう。後で理由を聞けば証拠隠滅の為に、友人に口止めをしたらしい。それにより、作りたくない相手に貸しを作った。そう、後で真剣に悩んでいたのを思い出す。
(そんなこともあったわね……)
昔の忘れられない思い出を思い出し、苦笑する。
ふと、あることを思い出す。それは、ソラに頼みごとをすることだ。だが、あれはそれほど重要とは思えない内容。別に聞かなくてもいいと思えるが、後々二人に何を言われるか――
いつも二人で合コンを開いているので、男関係には不自由していないと思われる。それだというのにこれ以上ネットワークを広げようとしているのだから、ある意味逞しいと言えた。
本気でカイトスを目指しているというのなら、真面目に勉強をし就職するのがいい。そして勤め先で素敵な男性を見付ければいいと思ってしまうが、彼女達に言わせれば「今が大事」らしい。
しかし今が大事ということで、合コンとは――言葉を失う。やはり、人生を甘く見ている。
その中にソラやその関係者が含まれると思うと、腹立たしい気持ちになってしまう。こうなれば黙っていて、そのまま卒業してしまった方がいい。だがイリアは、思っていることと行動が一致しない。時として周囲に流され、自分を見失う。現に今が、それに当て嵌まっていた。
その時扉が開き、イリアの憧れの博士ユアン・ラドックが入って来た。一同が立ち上がり、一斉に挨拶する。しかしイリアだけが入って来たことに気付かず、ディスプレーを見つめていた。
友人達との嫌な約束を考えていた為に、いつもと違った表情を浮かべている。そんなイリアの姿に疑問を持ったユアンは、躊躇うことなくイリアの側に歩みを進めた。そして、声を掛ける。
「どうしたのかな? ランフォード君」
「お、おはようございます。本当に、すみません。博士が来ていることに、気が付かなくて……」
「いいさ。ところで不機嫌な顔をしていたが、何かあったのかな? 女性に不機嫌な顔は、似合わない」
「そ、それは……」
「何か、あったのかな」
「い、いえ……」
「ランフォード君?」
いくら憧れている相手であったとしても、相談できることとできないことはある。それに「友人の合コン」と言ったら、どのような反応を見せるか。ユアンの性格の性格なら笑って話を聞いてくれると思われるが、心の中まではわからない。内心、ふしだらな女性と認識される確立が高い。
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