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第一章 異端の力
其の11

 研究施設が建てられている場所は、連邦本部から離れている。その分敷地は広く、様々な建物が点在する。その数をイリアは正確に把握していないが、それはまるでひとつの街のようだ。

 施設につくと、入り口でチェックを受けた。登録されたIDと、指紋を照合し中に入っていく。

 連邦の重要な施設だけあって、警備が厳しい。廊下では数多くの兵士とすれ違い、アカデミーとは違った雰囲気が味わえる。何かピリピリと張り詰めた、緊張感のようなものを。所属している研究室の前に着くと、専用のカードを機械に通す。ピッピッと電子音がし、照合が完了。扉が開く。

(あっ! 皆そろっている)

 中では何人ものカイトスやアカデミーの生徒が、研究を進めていた。イリアはそれらの人に挨拶をし、専用のディスクにつく。一人に二台のパソコンを与えられ、それらを用いり個々に研究を進める。一台一台のパソコンはネットワークで繋がり、他の研究部署とサーバーを共有している。

 イリアが行っている生物研究の意図は、未発見の生物の生態を研究し人類に役立てられるかという判断を下すというもの。利用価値があるとわかれば遺伝子構造を研究し、人々の生活に役立てる。

 また生物研究の一番の重要性が、人に危険を及ぼす生物の発見と研究。未開の惑星の中には、人を一撃で麻痺させる生物がいたりする。それらの生物に対抗する〈ワクチンの開発〉これも、重要な課題であった。一見、地味とも思える仕事。しかしそれは、人類にとっては必要不可欠な研究だ。

 研究の前にカイトスはその惑星に赴き、対象となる生き物を捕獲しないといけない。その為、他の部署より大変な部分が多い。何せ研究対象が、素直に向こうから来てくれるわけではないからだ。

 イリアは一ヶ月、他のカイトスに同行したことがある。だが、それはまだ短い。長くて七・八ヶ月。下手すれば二年は帰ってこられない。中には三年も故郷に帰っていないという者もいる。

 だがこれは極端な話であり、メンタル面を考えれば二年が最高である。それにスケジュールがキチンと決められているので、長期間研究することはまずない。また、未開惑星での調査は危険が伴う。それぞれの研究班には必ず軍が同行するが、危険が回避できるわけでもない。

 中には惑星に向かっている間に事故が発生し中断。対象となる惑星に建設した研究施設に野生生物が乱入し、カイトスや兵士が負傷。また原住民との折り合いがつかなく、口論となり研究が中止。幸いにも、どの事件からも死者は出ていない。しかしこの例が物語っているように、研究するにも命がけ。同行する兵士は、ラタトスクが多い。だが、数には限度がる。

 その為、一般の能力を持たない兵士が赴く方が多い。カイトスも一般の兵士よりラタトスクの同行を求めるが、力関係により、要人の護衛に回ってしまうのが現状。このあたりは、文句を言っても改善されない。

 ラタトスクの人数は多くなく、護衛を頼んでも三・四人しか連れていけない。それに対象となる惑星の危険度を考えると、能力の低い者は必然的に除外される。そうなると、ますます数に限りがでてしまう。

 イリアのように幼馴染に無理を言って、同行してもらうという手もある。しかし何らかの関係を持っているカイトスは、滅多にいない。ましてや友人や知人というのは、更に難しい。

 両者は協力を求める以外、接触は無いに等しいからだ。唯一関係ある部署といえば、ラタトスクの研究・メンタルチェックを行っている機関だけになってしまうだろう。それにラタトスクの行動は厳しいほど管理され、個人がどうこうできるレベルではない。それに見付かったら、何かと煩い。

 昔イリアがアカデミーに入学したての頃、研究の助手という名目でソラをとある惑星に連れて行ったことがあった。無論それはアカデミーに内緒で行ったことであり、もし知られていたら大目玉であっただろう。一見、自由に思えるラタトスクの行動。しかし、内情はとても厳しい。

 ましてや、他の惑星に赴くという行為。上に知らせていなければ、大変なことになってしまう。ラタトスクは、偏見の強い。その行動ひとつひとつが、監視されている。全ては、能力の暴走を恐れて。


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あきゅろす。
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