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第一章 異端の力
其の10

「これが、オレ達の運命。そのことを知っているのか、イリアは……いや、無理と言うべきか」

 真実を知らないからこそ、普通に付き合ってくれるのだろう。正直“変わっている”が本音であった。

 一般の人間は、力を持っているというだけで偏見の目を向けてくる。それに対し自分達が何をしたのかと、大声で叫びたかった。しかしその声は、多くの者達の手によって消されてしまう。

 空しい――

 それが、今能力者が置かれている立場だった。産まれてきたと同時に運命が決まっているなんて、なんと無常なことか。いや、これは決められた運命。そう、この世に犠牲者は必要だ。

 それは、生贄というべきものだろう。一部の者に批判をし、自身の方が優れていると優越感に浸りたいのだ。

「悲しすぎるよ、とても……」

 その言葉で、この世界の現状を表せた。しかし誰一人として、それを訂正する者はいない。歯向かう者が愚かで、そうでない者が正しい。それは、タツキが言っていた言葉。彼女は、歯向かった。歯向かったからこそ、ひとつの枠から外れた。だが、彼女は後悔していない。

 寧ろ、清々しさが感じられた。

「オレも、そうありたいよ」

 しかし、運命は非情だと誰も知らない。そして逆らう者が正しいことも、また知られてはいない。何故なら、今更訂正などできないからだ。それ故に、愚かな行為を続けていくしかない。

 ソラはベッドの上に置いてあった携帯電話を手に取ると、友人に電話を掛けることにした。メールの件についての回答を、伝える為だ。普段は、掛けるのも億劫な相手。しかし、今回は声が聞きたかった。

「……お前が送ったメールの件だけど、行くことにするよ。たまには食事も、いいと思ってね」

 今日は買い物に行くことを予定していたソラであったが、友人の誘いを優先することにした。気分が乗らない――そのような理由が、あったからだ。イリアが訪れた所為で、嫌な過去を思い出してしまった。すぐに、気分を切り返すことはできない。それだけ、記憶に鮮明に残っている。

「……わかった、その時間に」

 すると、電話口から大声で笑う声が聞こえてきた。その声に耳が痛くなり、思わず携帯電話を耳から離す。

「煩い! こっちは、朝から気分が悪い。だから、不機嫌な声なんだよ。切るからな。今夜、覚えておけよ」

 短いやり取りを終え、電話を切る。そして二つに折りベッドに放り投げようとした時、その手が止まった。タツキに、連絡しようと思ったからだ。しかし、相手が電話に出てくれるかわからない。何かに集中していると、周囲の音が聞こえないのだ。それなら、直接タツキの自宅に向かうのが早い。

 それに、聞きたいことがあった。これで、友人と会うまでの予定が決まった。ソラはフッと息を吐くと、タオルを抱え風呂に入ることにする。それは、ひと時の気分転換でもあった。


◇◆◇◆◇◆


 ソラと別れた後、イリアはモノレールに乗り研究所に向かった。研究所は銀河連邦の管轄というだけあって、様々な研究が行われている。イリアが通っている部署は主に「未知の惑星で発見された生物の研究」が、研究内容だ。

 研究所の主だった部署は「生物研究・能力・宇宙開発」と、大まかにわけることができた。しかし細かく分類するとそれ以上に数多く存在するが、大きく分割するとこの三つにわけられる。連邦の勢力が宇宙の大半を占めている事柄は、此処から窺い知ることができる。


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あきゅろす。
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