8月企画 お題:花火
不夜城 『親友?(山獄ヴァージョン)』
「なーなー、明日みんなで花火いかね? ちょっと遠いんだけどさ、親父のダチ
の花火師の花火が上がるんだってさ。見に行こうぜ」
山本は唐突にそういった。
「山本のお父さんの友達に花火師なんているの? すごいんだねー山本のお父さ
ん」
文句を言おうとしたら、十代目にさえぎられていえなかった。
そこから十代目と山本が話し込んでいたので、黙りこくって十代目のお邪魔に
ならないようにする。
ぼーっと歩いていたら、山本に声をかけられた。
「な、いくよな獄寺」
「お、おう」
突然声をかけられたので思わず了解してしまった。文句を言ってやろうと思っ
たのに。
「じゃ、今から甚平買いにいかねぇ? 明日着ていくやつ」
「は? 今からかよ」
「今から」
「何いってんだよ今からだぁ?」
「いいじゃん獄寺君。まだ時間あるし」
「十代目が、そうおっしゃるなら……」
十代目が言うなら仕方ない。
山本に、十代目が行くからだぞ、と念を押して、俺たちは甚平を買いに行った
。
待ち合わせは7時。
30分前に甚平に着替えて、準備を終わらせる。
すこし早く準備しすぎた。
30分間何をしていよう。
昨日買ったばかりの甚平。
俺には紅い甚平が似合うと言って譲らなかった山本。
ついには山本がすすめる甚平を買ってしまった。
本当に似合っているのかわからない。
山本は――どう思うだろう。
30分後。
俺は学校の前にいた。
まだ少し明るくて、学校の前にいるには少し恥ずかしい。
だがすぐに山本が来た。
「よかった」
それが山本の第一声だった。
「獄寺がそれ着て来てくれるかどうかずっと心配だったのな。着て来てくれてよ
かった。すっげぇ似合ってるぜ」
そういって山本は笑った。
「ったりめぇだろ。十代目だって着てくるんだ、俺だけ私服でいられっか」
我ながら――言い訳に十代目を使うのは卑怯だと思う。
そこで十代目が来て、俺たちは電車に乗るため駅にむかった。
空気を裂く甲高い音が響いて、大きな花が黒いキャンバスいっぱいに描き散ら
される。
遅れて届く爆発音が、光と音の速度の違いを明確にしていた。
横目で見る美しい花は脳裏に焼きつく暇もなく消える。
こんな状況でなければもっとこの美しい花火を楽しめたのかも知れない。
実は俺は、迷子だった。
いや、迷子は俺じゃない。山本が迷子だ。
この人ごみだ。能天気なあいつはふらふら歩いててそのまま人に紛れて迷子に
なったに違いない。
俺は一人だと気づいたとき、ちゃんと集合場所にいった。だけど誰もいなかっ
たから探しに出たんだ。
「獄寺っ!」
そんなふうにぶつぶつ歩いていたら、後ろから呼ばれた。振り返ると山本がい
た。
「よかったのなー……。探してたんだぜ獄寺」
「十代目は?」
そう聞くと、山本はふくれっつらになる。
「獄寺。いつも思うんだけどツナのこと気にかけすぎだぜ。ツナは大丈夫だって
」
「だからって」
「いーからいーから」
そういうと山本は俺の腕をつかんで歩き出した。
「花火がすげぇキレイにみえるとこみつけたのなー」
「ちょ、おい!」
俺の言葉を聞かずに、山本は歩き続ける。
どんなに文句を言っても、山本は振り向いて笑うだけだった。
そのうち、俺はなにも言わず山本についていくようになった。
「ここなのな」
だいぶ歩いて、山本はそういいながら止まった。
山本の肩越しに開花する花。
息をのむほどの美しさ。
夜空を彩る虹色の火花が、山本を後ろから照らしていた。
山本は、肩越しの花火にみとれる俺をみて笑っていた。
「キレイだろ?」
山本の言葉で我にかえる。
急に顔があつくなるのがわかって、俺は目をそらした。
美しい爆音のなかで、名前を呼ばれた気がする。山本をみると、山本もこっちを
みていた。
「山本」
自然に口が開いて、言葉を紡ぐ。
『好きだ』
爆音は俺の想いを遮り、俺を正気に戻らせた。
恥ずかしくなり、山本がみれなくなる。
目をそらしたまま、気持ちを落ち着かせるため花火をながめる。十代目が、その
あとしばらくしてから来て、3人で花火を見た。
花火がおわると電車で帰った。
その後も、特になにもなかった。
気になることが、一つ。
俺が告白したとき――
山本の口が、俺と同じようにうごいたようにみえたのは、気のせい……なのだろ
うか?
不夜城 REBORN!! 山獄
すいません。
十六夜に頼まれて藤田とケンジの「親友?」の山獄かいてしまいました。
すいませんでした。
中二病ですいません。
不夜城
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