小説
white
「………っ」
獄寺は言葉を失った
目の前で純白のドレスに身を包んだ女が、淑やかに目をつむり 神聖とも言える微笑みを讃えそこに座っていたのだから。
その姿が
あまりに愛おしく、美しかったから……。
女──ハルがそっとそのチョコレートブラウンの瞳を覗かせた
「隼人さん。似合いますか?」
ああ。言葉にできないほど、
綺麗だ
心の中で獄寺はそう呟いた
そのドレスも、純白を身に纏うお前も、周りのもの全ても
何も言えないでいる獄寺に、ハルは幸せそうに微笑んだ
「隼人さんも似合ってますよ、その白いスーツ。いつもの黒いのもかっこいいですけど、白いスーツを着ていると なんていうか…素敵です」
ウットリとした様子で獄寺をじっと見つめる
ハルからの熱視線に耐えきれなくなった獄寺はゆっくりと歩み寄り、髪にかかる白いベールを上げ、おでこにキスを落とした
「隼人さん?」
愛おしい。この女が、この女の全てが
「綺麗。お前にしては上出来だ」
「はひ…」
紅く染まる頬も
微かに潤むその目尻も
女の顎をすくい上げ口づけをしようとすると、女はまるで「待て」するかのようにそっと獄寺の唇に触れた
「…ダメです。キスはまた後で」
だって、あともう少しでしょう?
微かに傾けた首元が妙に妖艶で、たまらない気持ちになる
だってそんな仕草、誘ってるとしか思えない
「………無理だな」
「へ…」
そんなコイツに
やなこった って吐き捨てて
強引に唇を奪った
女は一瞬呆気に取られたが、仕方ないと諦めてオレの首に手を回した
この口づけは誓いのキスじゃない
言わば、決意を形に表すもの
永遠にお前を愛することを
オレ自身に刻むため
ふいにドアから聞こえる10代目の声
さあ時間だ。と女の手をとって、ドアを開け放った
穏やかな6月の日
昔彼女が憧れた、ジューンブライド。
幸せを誓う、6月の花嫁
さあ、式が始まる───
仲間が迎える最高の場所で
凛々しい表情の彼と、幸せに満ちた笑顔の彼女が
純白の世界で結ばれた。
End.
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