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小説
第二ボタン争奪戦(ツナver.)

「ふあ〜ぁ……ったくリボーンのやつ…」
あの小さな家庭教師にいつもより1時間も早い時間に叩き起こされたのはついさっき。
まだ眠気覚めやらぬままに校内へ入る
するといつも以上に騒めき立つ女子たちの大集団があった

「うわ、なんの騒ぎ?」
女子たちの間をすり抜けて自分の靴箱を目指すが「邪魔よダメツナ!」とか「獄寺君と山本君まだかしら」などと聞こえる
そして超直感を使うまでもなく ああ と察した

ターゲットは獄寺君と山本の第二ボタンか……あの二人モテるから。
心で今日の二人の命の無事を祈りつつ、人混みをかき分けて、やっとの事で教室に到着した

教室に着いたら着いたで立ち替わり入れ替わり学年問わず女の子が訪れ、窓際にいるツナに「獄寺君いますー?」だとか「山本くんはどこ?」などと問いかけては去っていく。

「二人共すごい人気だなぁ…そういえばここ最近呼び出しラッシュだったもんな」
卒業する前に我こそはと朝昼問わず告白のため呼び出しされ、獄寺に至っては完璧にキレてツナでも宥めきれない程だった
「あ、ツナ君っ」
「きょ、京子ちゃん!おはよっ」
目の前には長年想いを募らせ続けたマドンナ、笹川京子がいた
「おはよう!ツナ君今日は早かったんだね。いつもギリギリに来るから違う人だと思っちゃった!」
「ははは…まあね」
リボーンに叩き起こされなければ定時まで寝ているつもりだったのだが…そんなのカッコ悪くて言えるはずもない

照れ隠しに頭を掻いていると隣の席に彼女が腰を下ろした
膝の上で指を絡め、何故かモジモジと床を見つめている
教室には他に誰もいなく窓からは桜が風に舞っていた。
それ以外には何もない、二人っきり独特のむず痒いような照れくさいような空気が漂っていた

な、なんか…なんだろうこの雰囲気!!
顔から火が出そう!!

ツナが心で悲鳴を上げていると、京子はそっと口を開いた

「あの……ツナ君……」
「……う、うん。どうしたの?」

誰もいない教室に、頬を染めた彼女
卒業式に、舞い散る桜

これって

こういう時って

えっと……


そういう事なのか!!?


目を見る事は出来ず、そのハニーブラウンの頭を見つめていると、彼女は勢いよく顔を上げた

ド、ドキッ

「ツ、ツナ君のね!」


バク、バク、バク…


ドドドドドドドド…!!!


え?
ドドドドドドドド?

「っだぁぁぁ!マジでどっか行きやがれテメーーー!!」
「だってしょーがねーだろ?他は全部塞がれてんだから」
「だからって同じ方に逃げてちゃ数が2倍なんだよ!!」

ん、んん?聞き慣れた声が……

「あれ?この声って…」
「間違いない…」
そっと廊下に顔を出してみると、汗だくで廊下を全力疾走している獄寺と山本の姿が目に飛び込んできた
そして同時に、遠くの背後にそびえる女子たちの壁も

「っでえええええええ!?」
迫り来る恐怖
ダメだ。このままでは自分の命が危ない

顔を引っ込めようとしたが時すでに遅し

「っじゅ、10代目ぇ!」
「あっ、ツナ!」

「「ちょっとかくまってくれ(ください)!」」

ツナを見止めた二人は、軽々と窓枠を飛び越え 各々ロッカーの中や教卓の陰に身を潜めた
さすがに強敵たちを相手にしてきただけあって すでにそこに気配はない

そして数秒後に旋風を巻き起こし奇声を上げながらハンターと化した女子たちが廊下を駆け抜けていった
数名の女子が教室を覗き「獄寺くんと山本くん見なかった!?」と息急き切りながら聞いてきたのでブンブンと大きく首を振っておいた

しばらく経って、やっと訪れた静寂。
「……ま、巻いたか」
「ふいー、危機一髪って感じだったな!獄寺」
「テメーが女どもを増やすからあんな事になんだろーが!!」
ゼェゼェと今頃になって止めていた息を解放したのでどちらも苦しそうだ
「あの、ふたりとも大丈夫?」
「へ、平気っスこんぐらい」
「いやーまさか朝から女子に追い掛け回されるとは思わなかったぜ。アイツらも元気な」
「な、何言ってんの山本…」
こんな時でもマイペースは変わらない
獄寺はといえばすでに呼吸を整えタバコを取り出そうとしているあたり彼らしいと思う

「ったくアイツらもくだらねー、制服の第二ボタンがなんだってんだ」
煙を窓の外へ吐き出しながら、なおも屋外を忙しなく走り回る女子生徒を一瞥して眉をしかめた
「まーいいじゃねーか、こうやって追いかけたり追いかけられたりすんのも青春だろ?」
「こっちは願い下げだね!迷惑極まりねぇ。一体ただのボタンになんの意味があるってんだ」
ツナが心底嫌そうに窓の外を睨む彼を宥めようとすると、ふいに京子が立ち上がった

「第二ボタンってね、男の子の胸のところにあるでしょ?だからその人の心に見たてて『あなたの心がほしい』って願いを込めるらしいよ」
さっきまで膝に置かれていた手はキュッと胸の前で結ばれていた

「へぇーそんな意味があったのか」
「ケッ、くだらねー。ボタンぐれーで人の心が変わるかっつーの」
感心する山本に対し獄寺はやはり呆れ切った返事を返した
ただツナだけは、京子の語りに強い気持ちを感じていた

強く脈打つ心臓

卒業式が終わったら……勇気を出して言ってみよう


上手くいくかは分からないが、今日という日は卒業式。


弱気な自分ぐらいは卒業してみよう




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あきゅろす。
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