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小説
第二ボタン争奪戦(山本ver.)

今日はなんだかいつも以上にギャラリーが多かった

もう3年の終わりあたりに並中野球部は引退しているが、こことももうお別れということで後輩と部室の掃除をしながら引き継ぐべきことを語らう。
掃除もひと段落して 手持ち無沙汰になった野球部員達で、思い出のグラウンドで最後にワンゲームして終わろうという事になった。

「そぉーーらっ!!」
スパァン!と小気味よい音を立てて、ミットのど真ん中にボールを叩き込む
「山本せんぱ〜い、早すぎて打てないッスよ〜ちょっとぐらい手加減してくださいってば!」
「アッハハ!ワリーな、野球では手加減しねーって決めてんだ」

余裕の笑みを残し、見事野球部員全員の打線をストップ。最後はフェンス越えの特大ホームランをかっとばし、最高のラストゲームを終えたのだ。

グラウンドに敬意を称し帽子を脱ぎ、晴れやかな顔で叫ぶ
「ありがとうございました!!」
「「「ありがとうございました!!」」」

期待のホープとして華やかな入部を果たした1年
4番を背負い、力を尽くした2年
部長として チームのエースとして過ごした3年
思い出たっぷりのグラウンドを後にした


さーて、教室戻ってツナと、あと来てたら獄寺も一緒に屋上で思い出話でもすっかなっ♪

卒業という節目に不思議な感覚を覚えつつ校舎の方向へ歩き出すと、なぜかそこには人の壁が出来ていた

「あ、山本君!」
「え?」

こちらの疑問符などまるで無視して、数え切れないほどの女子が山本の第二ボタンを取らんと襲いかかってきた

え、これって、どーいう状況??

訳の分からぬままに人混みをすり抜け、とりあえず校内を駆け回っている現状だ


「たけしくーん!おねがーい第二ボタンちょうだいー!」
「何言ってんの武のボタンはわたしのものよ!」
「武のボタンは渡さないわ!」
「まーまー、喧嘩すんなって」
器用にも後ろを振り返りながら階段を三段飛ばしで駆け上がる
後ろの女子たちの顔も鬼気迫る様子だ

「じゃあボタンを誰かに渡してよ!」
「え?ボタン、って制服のか?」
「そーよ!」
「あー…オレの制服近所の子に譲るからちょっと…」
ボタンを取るわけには…
「問答無用!!」
「安心して山本君!わたしスペアのボタン(他の男子から強奪したやつ)持ってるから山本君の第二ボタンのところにちゃんと付け直すから!」

「え、えええ…」


なんか 女子が怖い。
山本はとりあえず次の階段は四段飛ばしで降りようと決めた

卒業式の日って鬼ごっこかなんかのイベントがあんのかな?
でもこのまえ渡った卒業式のプログラムにはそんなこと書いてなかったよなー
などと考えながら廊下角を曲がると、自分よりちょっと背の低い男と盛大にぶつかった

男は鼻を押さえながら1、2歩後ずさる
「テメーどこ見て…って や、山本っ!?」
どうやら獄寺だったらしい
しかも背後にすごい数の女を引き連れて

「ハハッ!よっ獄寺…ってお前も大変なのな」
「な…『お前も』って事は……」

絶望と驚愕で顔を強張らせた獄寺が恐る恐る自分の背後を覗く
きっと今自分が見ているものと同じ景色が見えているのだろう

「あははっ、女子が第二ボタン奪いにくるイベントなんてのもおもしれーよなっ!」



「こ、こんの……」




「野球バカがあああぁぁぁぁ!!」



戦闘ゴングが鳴り響く……




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あきゅろす。
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