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小説
Fanfare!A
カアァァァァ…!!

閃光が辺りを照らし決戦の地は眩く輝き、それは視界を阻む
「なんも見えねっ」
「ありゃあボスさんの炎ダァ。あの女…死んだな」
「でもだったらおかしくない?ここら一帯吹っ飛んでるわよ」
「ぬぬぅ… 光がひくぞ…!」

サァ と光が消え、次第に目が慣れてくると1人の人影が煙の向こうに見えてきた
「誰だぁ…?」
煙に浮き上がる影がのそりと動く
そこから出てきたのは…

「ボスぅ!!」
「やっぱ最強じゃん♪うちのボス」
「あの娘は…」
「まぁ 十中八九消し飛んだだろうなァ」
「そうですよねぇ あんな攻撃受けたら普通なら骨も残りませんよ」
「そうそう。ボスは誰よりも冷酷でカッコイイって」
「「「「なんで生きてやがる(いる)(るの)(んだぁ)!!」」」」

うむ、いいノリツッコミだ。このテンション好きになってきたよと無邪気に微笑んでみせると、ありえないものを見たという表情で部下'sが固まった
まあそりゃそーか、一瞬は死人だと確信してた人だもんね。

先程の種明かしをしようと口を開いた時 チッという舌打ちを残してボスが館へ帰ってしまった

「ありゃ…帰っちゃった」
「…ボスが…仕損じた…だと!?」
おかしなピアスをしたヤツがワナワナと震えボスが去った方を見つめている
すると刀をしまったスクアーロさんが至って真面目な口調で「オイ女ぁ」と私に呼びかけた

「さっきの技はなんだぁ。どんな攻撃でも防ぐ強靭な風のシールドと言えど、ボスさんの一撃を受けて立ってたのは日本のクソガキぐれぇのモンだぞぉ」
「日本のクソガキ…ね。聞きたいですか?技のコト」
それはもう偉そうに言ってみると
「コイツムカつく……」
チャッとナイフの刃先が向けられる
すぐさま風でシールドを張ると、悔しそうに歯噛みした

「うーん…どっから説明しようか」
頭で筋書きをまとめ どうやら金髪王子も諦めたようなのでシールドを解く

「コレは私の雲の炎で空気を膨張させてるんです。だから高圧力の攻撃にもある程度耐えられる。まー、さすがにさっきのヤツは一点集中しても弾くのが精一杯で吹っ飛ばされちゃったんですケド」
雲の炎を灯し軽く空気を地面に放って見せた
途端ふわりと浮き上がる小石や砂
「なるほどなぁ」
「でもそれじゃアタシ達を拘束したアレの説明にはならないわよ。一体なんなのよあの息苦しい技!」
プンプン!と頬を膨らませながら言うが全くもって可愛くない。むしろむさい
というか必殺技のカラクリをこんな誰が盗聴しているか分からない場所で言えと!?

思わず突っ掛かりそうになったのを抑えて、事務的にと自分を戒めた
「あの〜 こんな外でネタばらしするのは自殺行為なんで、とりあえず中入れてくれません?あなたのボスさんも別になんも言ってないし、許可してくれたって事だと思うんですよ」
そう。重要なのはヴァリアーに入れてくれるのかどうかの一点。

───探し人を見つけるために


うーん とヴァリ家の方々が悩む
「あのボスさんが見逃すってこたぁそういう事か…」
「うぬ…」
「まぁいいんじゃなーい?ちょうど雲の守護者は欠番だしぃ」
「しゃーねぇなぁ。それにあの技のカラクリを知らないとムカムカするし〜」

結論
『気になるし仕方ねーしボスが見逃したししょうがなく、ほんっとーにしょうがなく入れてやる。だが少しでも不穏な空気を見せたら即座にブッタ斬るぞぉ』

らしいです。 ツンデレか!!

かくかくしかじかで やっとアジトの中へ入れてもらうことが出来た
壁にはナイフが刺さったような痕が無数にあるし天井には蜘蛛の巣が張りまくり
床の絨毯はボロボロだし、たまーに長い抜け毛が…もしや若年性ハゲ…って言うのは嘘で
「テメーさっきから何ブツブツ言ってやがる」「あれ、独り言出てましたぁ?」
「ゴチャゴチャ抜かしてっと刺身にすんぞぉ。黙ってとっとと歩けぇ。あとオレはまだハゲてねぇ」
「あ、それも聞こえてましたか。すんませんね本音出ちゃって」
「ししっ……ロング白髪の抜け毛きっも」
「う”ぉおおい!てめーら口塞げオラァ!」
シャキーンと刀が抜かれるが緊張感など一切無いのでプククと笑いがもれる
なんだろうこの人。おもしろい、キレキャラだよ。きっとツッコミ担当なんだろーなー
「なにそこ笑ってる!」
またキレかかって額に青筋を浮かべている彼を見て 嘆かわしそうに軽いため息が聞こえる
「もぉそこ子供みたいな言い争いしないでちょうだい!またボスが暴れるわよ」
お母さん的ポジションなのだろう。オカマがまるで息子を叱るように宥めてくる
「だってマーモン居なくてつまんねーんだもん」
「しょうがないでしょ。あのコは調べ物で当分帰って来ないんだからガマンなさい」
「チェッ…」

マーモン…本名は確かバイパーだったかワイパーだったか
強力なサイキッカーでありアルコバレーノ。
留守か…残念。
粘写頼みたかったんだけどなー

「あれ、そういえばボスさんは?」
「さあな、ボスはいつでもお忙しいのだ。そして女、ボスを『ボスさん』などとふざけた名で…」
「あーーじゃあ私のことは伝えといてくださいヒゲオヤジ」
「くぬうぅ…!」
「着いたぞぉ」
やっと薄暗い廊下を抜けて、客間に通された
だが中は燦々たる有様だった
それはいっそ清々しいくらいに…


「うわぁ…」
まず、ソファが破れて綿が出てる
そしてテーブルが真っ二つ!なんてこった!
本当に客をもてなそうという気があるのかココ
「この部屋を使うのは初めてだ」
「そうねぇ〜客なんて今まで来たことないものね。刺客なら四六時中来るんだけど」
「ししし 上手いこと言ってんじゃねーよカマのクセに」
「まっ、失礼ねベルちゃん!メタルニー食らわせるわよ!」
「やるか」

そうか、こうしてアジトがボロボロになっていくわけだ。

納得したところで、ゴングが鳴らされる寸前の殺し合いを まあまあ と宥めてソファのかろうじて座れそうな面に腰掛けた
ほんとどっちが接客してんだか

「ちゃっちゃと話しましょーよ。私も知りたいこと色々あるんですから」
「ケッ でけー態度してんじゃねぇぞぉ」
「全くだ」
「まず自己紹介詳しいver. みなさんのことは大体知ってるんで質問とかあったらご自由にぃ」
各々が好きなところへ佇み 静かに耳を傾けてくる。
さて、詳しく教えてしんぜよう

「えーまず名前、foresta・faroって書いてフォレスタ・ファーレ。年齢は16。」
「げっ…オレと同い年かよ」
「げっ…クソナイフと同い年かよ」
ああ言えばこう言う。もうすでにこの少年とは犬猿の仲になりつつある
殺気オーラを放ちまくって殺るか と睨み合っていると、大事なことを言い忘れたと姿勢を正す

「あ。んでボンゴレファミリーとボスの戦いの経緯も大体分かってます」
すると神妙な面持ちでスクアーロさんが顎に手をやった
「なんだ知ってやがったのか。跡取り争いのことをよぉ」
「ハイ。実は日本まで行って遠くから見てたんで、何があったかは大体」
「うげ、見てたのか」
「うん。でもベル王子のは室内だったしモニターも無かったからあんま見えなかったけど確か最後血まみれ干物になってなかった?」
「てんめー」

いろいろあったが思ったより朗らかな方々らしく会話は弾んでいく

「誕生日は12月25日まあ世間一般のクリスマス。出身地はシチリアの片田舎。んでここに入隊希望した理由は、ちょっと探してる人がいるから」
「んまぁそれってもしかして…恋のお・あ・い・て?」
小指を立てて私に迫ってくる彼(自称女)に周りからは呆れた目線が集まっている

いやいやそんなんじゃ…と言おうとしたが 心に引っかかって暫く考え込んでしまった
出会ったたのがあまりに幼すぎて、彼との記憶は遠くに霞んでいるのだが…

手掛かりは彼の幼い頃の写真と彼の忘れ物、そしてまるで怯える子猫のように威嚇する彼の心

会わなければならない。彼が忘れていったものを届けるために。

───きっとそれは彼の大切なもの…

考え出すと様々な感情が溢れ出してくる

───でもそれを彼は望んでる…?
私なんて忘れているかもしれない。
私が彼にしたことは彼を救うことではなかったのだから

じゃあ私はどうすればいいのか…

「……ぃ」

「お”ぃ……!」

「お”ぉ”ぉ”い 女ぁ!!」
「うぁいっ!!?」
「ったく聞いてんのかゴラァ」
どうやら意識が深いところにいっていたらしくスクアーロの怒声でハッとなる
「あ、いや何でも。何でしたっけ?」
「メシは食ったのかって聞いてんだよぉ!」
「あ、ご飯……は いいです。ちょっと疲れちゃったんで…」
心に沈んでいたものを思い出してしまったのと先程の戦闘による恐ろしい緊張で、今は食欲ではなく激しい睡魔に襲われている
「お顔真っ青よお?大丈夫?」
「あー…寝るとこありますかね。さっきから眠くて眠くて…」
「う”ぉぉい ベル案内しとけぇ」
「え”っ なんでオレ。レヴィやれよ」
「ふんっ 俺は仕事だ」
「あの〜…早くして下さい…ほんとどこでもいいんで」
むしろここでもいいからお前ら出てけ〜

「ちぇ、わーったよ。付いてこい」
「ふぁーい…」
少年に案内され暗い廊下を進む


二人が消えてから残された三人はボソリと呟く
「不思議な娘だ…」
「うーんケド大丈夫かしら。何か色々抱えてそうよぉ」
「めんどくせぇ……てか」

「さっきの技のこと聞いてねぇぞおおっ!!」

スクアーロの叫びも虚しくファーレは個室で眠りにつくのだった。

種明かしはまだまだ先……

「てぇいっ!」
シュッ パァンッ ドスッ
「うおっ あっぶね〜」
跳ね返ったナイフは風に阻まれて逆に投擲した輩へと飛ばされていった

モチロン 暗殺には対策済みだ。ザマーミロィ







「ふあ〜ぁあ……あ。どこだここ」
目を覚ますとそこは見覚えのない城内…
「あー、思い出してきた。ヴァリアー入ったんだったっけぇ」
近くのチェストに置いてあった腕時計を見ると夕方の5時を示していた
あいかわらずホールの方からは騒々しい怒鳴り声やら 茶化すような声やらが響いている
騒がしいなぁ…と思いながら大きく欠伸をするとオレンジの眩い光が目に入った

キレイな夕日。

寝起きのせいもありボーッと窓の夕日を眺めているとドアが開いた
出てきたのはエプロン姿でおたまを持ったルッ
スさんだ。
「あら起きてたの」
すでに起きている私を見て首をかしげた
ついさっき。と答えベットから降りる


「こっから見える夕日はキレイですね」
「そうねぇ、ここは特に見晴らしがいいから。ボスも割とこだわって選んだのよん♪」
自分が選んだわけでもないのに誇らしげに言う彼女に気の無い返事を返し、片手に持ったおたまを指差した
「おたま持ってるってことは、そろそろ晩ご飯っすか?」
するとハッと窓から視線を戻して ヤバいというような顔をした
「そうだったわ!いけないお鍋焦げちゃう!」
「あー 私もやりましょか、ご飯」
「もしかして、お料理得意なのぉ?」
「まあ。一人暮らし長かったのである程度には」
そういえば、ボスって何食べるんだろう。ふと湧いた疑問を投げかける
「いつもどういうの作ってるんですか?」
「う〜ん。高級なお肉を焼いたりぃ?高級なお魚を焼いたりぃ?高級な野菜を盛ったりかしら」
え、高級?しかも焼いて焼いて盛るって
「………そういやぁこのお城の厨房に料理人はいないんすか」
「そりゃいるわよ。でもファミリーのみんなには私が作ってあげてるの!毒殺されたら困るしネ」
しれっと言い放った言葉にぞわりと鳥肌がたった

こ、こえええぇぇぇえ!!!
そら毒殺されたら困るけどさ!それをハートつけて言いますか!
少々ベクトルが違うかもしれないが謎の畏敬の念を感じた私は直立した

「……姐御とお呼びしても」
「あら、大歓迎よ♪」
「おっす。ルッス姐さん」
この人ハンパねぇ…と心の中でごちて、晩ご飯を作るべくキッチンへと歩き出した





晩餐はとても愉快だった
まず皿が飛ぶ。
そして料理が飛ぶ。
同時に怒号が飛んで。
果てはナイフが飛び
ついでに王子の理性もすっ飛んで
流血騒ぎ…って

なんじゃこりゃあああああ!!

あああああ…ちゃんとボスに挨拶しようと思ったのに、なんでこんな重混在!?

とうとうしびれを切らして「ご飯ぐらい落ち着いて食えやおらーーー!」と叫んでしまうほどのありえない光景だった

伊達に何年もこの荒くれ集団で過ごしてきていないルッス姐さんはなんでもないようにとっとと料理第2弾を出した
すると綺麗に盛られていたメインの肉が瞬く間に消え去った
「う”お”お”ぉい!てめぇ肉全部取ってんじゃねぇぞ!!」
「あ”あ”?」
「ちょっとケンカしないの!お肉ならほらあっちの皿にも…ってベルちゃんもお皿抱え込んじゃだめでしょ」
「やーだね、だってオレ王子だもん♪」
「ふはは、こんな事もあろうかとオレは先に肉を……無いッ!?」
「あらやだレヴィ、テーブルの下に落ちてるわよ」
「うっ……くそぉ…」

なんなんだこの集団は。本当にあの圧倒的武力を誇る独立暗殺部隊ヴァリアーなのか
どう見ても騒がしい大家族だ……

「ご飯ぐらい落ち着いて食べなよも〜〜」
と言いつつ自分の分はガッチリ確保しています
誰にも渡さんぞこの肉は…
いただきまーすと食べようとしたその時…

ヒューーン

グシャアァ……


───はい?


目の前の肉がワインまみれになった
さっきまで美味しそうにホカホカに焼けていい匂いを醸し出してミディアムレアの最高級お肉が………

ブチッ……

う”ぉ”ぉ”いぃ……
わたくし、マジ切れタイムです


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