小説
benedizione(未来捏造、白蘭に壊滅させられたPWの話)
家の外では、絶えず銃声が響き続け
殺伐とした世界が広がっている
締め切ったカーテンのせいで部屋は暗く、その中ではたった二人の男女が身を寄せ合っていた
ボソリと彼が呟く
「オレは……なにも守れなかった」
その言葉を聞いた女もグッと唇を噛み締める
ああ…とうとう彼の心も、耐え難い哀しみに染められていく
私に…何ができるのか
「そんなこと無いですよ」
「でもオレは…10代目も、ボンゴレも、同志も……なに一つ…」
「隼人さん…」
ついさっき、ボンゴレの本部が陥落した
もちろん隼人さんは最後までミルフィオーレファミリーに立ち向かった
でも、戦力差は圧倒的で 残った数少ない仲間とともに基地を手放し 地下へ潜った
モニターで本部が焼け崩れていくのを見ながら……
なんて残酷なこと…
ツナさんも、ボンゴレも、ファミリーも 隼人さんは全て目の前で失っている
守護者は散り散りになり、地上へ私を迎えにきたその時すでに、彼の心は壊れてしまいそうだった
「………情けねぇ。何が10代目の右腕だ……今日だって、オレがちゃんと指揮をしてれば…」
こんなにたくさんの仲間を死なせずに済んだのに
悔いるように目を固く瞑り歯をくいしばる彼を、包み込むように抱きしめる
ハルに出来ることは彼の哀しみを少しでも分かち合うことだけ…
「隼人さんは精一杯頑張りました。だからどうか…あまり自分を責めないで」
「でも!」
「ツナさんは」
「ツナさんは、ハルに言いましたよ。きっと平和な世界にしてみせるって。そういって…敵の元に乗り込んでいったんでしょう?
ねぇ隼人さん。ツナさんは最期になんて言ってたんですか?」
ハルの肩からゆっくりと顔を上げ、彼は辛そうに眉根を寄せる
唇を噛み締めながら 彼は呻くように言った
「『生きろ』って……例えどんな辛いことがあっても、生きて、伝えるんだって…」
この世界の哀しみを
受け継いできたボンゴレを
オレたちの生きた証を
隼人さんは微かに嗚咽を漏らしながら、私の髪に手を差し入れ泣き顔を見られまいとする
きっと、ツナさんは微笑んでいたんだろう
彼は今、ツナさんの姿を思い出してる
頼んだよって一言残して、一人逝ってしまったあの凛々しい姿を
「…っ!!」
微かに彼の嗚咽が響く。
やっと流せた悔しさの涙。良かった、ちゃんと泣くことが出来て
柔く彼の背中を叩きながら、ハルも少し涙を流した
辛くてもいい。生きているだけで、命があるだけで 未来は変えられるのだから。
「隼人さん…大丈夫、大丈夫ですよ。」
「…ハル……っ」
もう、泣かないで
「一人じゃないです。ハルがいます」
「う……」
ハルはここにいますから
「愛してます。きっと…光ある未来も来ます。だって必ず日は昇るでしょう。朝の来ない夜なんてないんですから」
「っ……ああ…。」
絶望の中でもいい、共に生きていこう
暗闇にも 光は生まれるのだから
彼を抱え起こし
互いにそっと唇を重ねる
頬を涙が伝っていく
愛と哀しみがないまぜになった涙が。静かに
しん とした静寂が二人を包み込む
さあ、戻ろう。数少ない仲間のいるとこへ
「Tu e nel mond」
”貴方と世界に”
「Tu e vongole」
”お前とボンゴレに”
「「benedizione」」
”祝福あれ”
今が長く暗い夜だとしても
この世界は続いている
そう 希望は、生まれ続けるものだから
End.
----------------------------------------------------------------------
(突然ですが)あとがき+補足
後から読んだら結構痛かった…
白蘭に滅ぼされた未来でもボンゴレは決して全て壊れたというわけではなくて、細いでもボンゴレを語り継いでいくんじゃないかなーと思って書いたもの
この話のあとに違うパラレルワールドでツナが白蘭を倒し、元どおりになるっていう感じです。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!