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うたプリ夢・短編集
☆2


 暖かな春の陽気の中、早乙女学園内にある裏山を二人で登っていた。アイドルであるトキヤくんとのお花見はメジャースポットは勿論のこと、普通の公園でもできない。だけど早乙女学園内なら問題ないだろう、ということで裏山になったのだ。


「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫……」


 早乙女学園内にあるだけあって、なかなか厳しい道程……。桜を見る前にへとへとになりそう。
 裏山を登り始めてから三十分くらい経っただろうか。ようやく大きな桜の木が私の視界に入ってきた。


「や、やっと桜……!」

「感激するのはいいですが、足元に気をつけてください」

「はーい!」


 そんなトキヤくんの注意を聞いたそばから、私は見事に躓いた。


「わっ!?」

「紅葉!?」


 咄嗟にトキヤくんが支えてくれたので地面に倒れずに済んだ。


「あ、ありがとう……」

「全く、注意したでしょう。足元に気をつけなさいと」

「ごめんなさい……」


 しょんぼりしているとトキヤくんの大きな手が私の頭に乗せられた。そしてゆっくりと撫でられた。


「すぐ気付けてよかった……。またこの短距離で君が転ばないとは限りません。手を繋ぎましょう」


 そう言うとトキヤくんはバスケットを持っていない方の手を差し出した。私がおずおずと手を伸ばすと、トキヤくんの手がスッと私の手を掴んだ。
 私が顔を真っ赤にしているとトキヤくんは可笑しそうに微笑みながら、


「行きますよ」


 と言い、歩き始めた。私もつられて歩き始める。
 数分で桜の木へ到着した。近くで見る桜の木は迫力があり、私の視界がピンクで埋まるんじゃないかというくらい満開だった。


「紅葉、シート敷きを手伝ってください」

「わかった!」


 シートは一人じゃ敷きにくいよね。
 用意したシートは三人用。本当は二人用にしようかなと思ったけど、お弁当の分を考えたら少し広い方がいいと思ったのだ。シートの中央にバスケットを置き、それを挟むように私達は座った。


「さて、紅葉はどんな弁当を作るんでしょうね?」



 そう言いながらトキヤくんはバスケットの蓋を開けた。そして中から弁当箱を次々と出していく。弁当箱は全部で三つ。一つ一つトキヤくんが開けていった。


「ほう……いかにも紅葉らしい弁当ですね」



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