[携帯モード] [URL送信]

うたプリ夢・短編集
♪02



「……よし、こんなもんかな!」


 夕方。仕事を終えた紅葉はテーブルの上に散らばっている書類を一つに纏めた。トキヤの出演する番組があと五分で始まるのでテレビを付けた。アナウンサーがちょうど芸能関連のニュースを読み上げているところだった。


『いやー、シャイニングさんは本当に面白い企画を立ち上げますね』

『えぇ、そうですね。では次の芸能ニュースです。……えっ?速報ですか?』


 どうやら用意されたものと違うらしい。スタジオが少しざわめいてる。スタッフがアナウンサーに新しい紙を素早く渡す。それをアナウンサーは読み上げた。


『速報です。なんと歌手で俳優の一ノ瀬トキヤさんに熱愛疑惑が浮上しました』


「……え?」


 紅葉は自分の耳を疑った。しかしそれは空耳ではなく、その証拠に『速報 一ノ瀬に恋人が!?』というテロップが表示されていた。
 自分とトキヤの関係が世間に知られた?最近会っていないのに?疑問が紅葉の頭に渦巻く。
 二人の関係を知る人は数少ない。それもみんな気の知れた友人たちだ。では何故こんな報道が?


 ――このままだと、トキヤくんの芸能界活動が……!


 デビューしてかなり経つが、まだまだトキヤは新人扱いだ。こんな形でバレてしまってはシャイニングから呼び出され、下手するとトキヤは二度と芸能界に出ることが許されなくなってしまうかもしれない。
 パニックに陥りかけている紅葉を追い討ちをかけるかのように、アナウンサーはニュースを読み上げた。


『本日正午頃、一般女性を連れた一ノ瀬さんが女性の住んでいると思われるマンションに入っていくのが目撃されました』


 テレビには長身の女性をエスコートし、マンションの一室に入るトキヤの写真が映し出されていた。


「だ……れ?」


 そのあとアナウンサーは色々と述べていたが、紅葉の耳には入らなかった。
 仕事が入ったからと言って今日の食事はなしになった。トキヤは仕事のはず。でも映し出されたのは間違いなくトキヤ。そして彼は知らない女性と手を繋いでる。


 ――今日は仕事じゃなかった……?


 何が何だかわからなくなった紅葉は目から溢れてくる雫を止めることができなかった。





[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!