毛皮をまた被って、芝居に戻る。
「ここが客間だ。ゆっくりしていけよ」
バーテン服の青年がドアを開き、先に入る。続けて黒ずくめの青年も入り、入口の近くで笑ってる。
少女が部屋に入り、黒ずくめの青年の横を通り過ぎようとした、その時だった。
「……ねぇ ちょうだい?」
アハハハ、と少女の耳元で黒ずくめの青年が囁いた。恐怖で固まる少女に、バーテン服の青年が言う。
「どうしたんだ?そんな目で、身体を震わせて……。暖かいミルクでもてなしてほしいのか?」
少女のすぐ横で、黒ずくめの青年が笑いながら言う。
「さぁ、中にお入り。ここはとても暖かい……。見返りはポケットの中身でいいから」
「!!!」
少女のポケットの中身。それは……
「ちょうだい?早く早く……ねぇほら、今すぐに!二者択一の原則をかなぐり捨てて!!」
少女は悟った。もう自分はこの館はおろか、この部屋からすら出れないと。
まやかしでもてなして、甘い蜜を吸って……
「ちょうだい?よこせ、ほら!今すぐに!!」
「「ちょうだい」」
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