「……あれ?そういえば、さっきこの娘、喋ったよね?」
黒ずくめの青年の問い掛ける声に、バーテン服の青年が答えた。
「んあ?……あぁ、そういや喋ったな」
「眠っていても、歩けるようにしたんじゃなかったっけ?」
「……あ゛ー、効果があまりなかったんじゃねぇか?」
「え?本当?……困っちゃうなぁ」
間の抜けた声が響く。どうやら、あのシロップに何か混ぜていたようだ。
目隠しの隙間から、僅かに光が入り込む。そこから覗き見たランタンが映し出した影に、少女は思わず身の毛がよだった。
知らぬ間に館に着いていたらしく、今は通路のような所を歩いている。そこの床には白い物が転がってた。理科室にある人体模型のような、白い物が……。
少女が恐怖したのに気付いたように、二人が言う。
「おやおや、悪い子だね……もうお目覚め?」
「目隠しが解けたなら、盲目にするか?」
黒ずくめの青年はナイフを、バーテン服の青年はランタンを、それぞれ少女の前に出し、少女の目にじわじわと近付けいく。
「ほら、ほら!笑いなよ!可愛いお顔で」
少女の恐怖がピークに達した。声にならない叫びが、通路に響く。涙が溢れ出ている。
少女のその様子を見るなり、黒ずくめの青年は可笑しそうに笑った。
「あははっ……冗談だよ、冗談。そんな事しないから安心して」
「そんなっ……冗談に……見えな、い……」
「本当だって。ほら、何も持ってないよ?」
よく見ると、黒ずくめの青年の手には何もなかった。バーテン服の青年も、前を向いて何事もなかったように歩いている。
「ね?」
「は、はい……」
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