○○でボカロ曲パロ
02
目を覚ますと辺りは暗かった。いや、周りが暗いのではなく、目隠しをされているのだ。目を覆う布を外そうと顔に手を伸ばした。だがそれは誰かが私の両腕を掴むことによって阻止されてしまった。
「幻想の催眠に溺れたままでも良かったんですよ?」
遠くからトキヤの声が聞こえた。ということは、今私の手首を掴んでいるのは音也なのだろうか?
「目隠しは外しちゃダーメ。面白くなくなっちゃうでしょ?」
近くから予想通りと言うべきか、音也の声がする。手首を握られる感覚がなくなると、私は上体を起こした。誰かの手――おそらく音也の手が私の足に触れた。反射的に変な声が出てしまう。
「あぁ、ごめんね、急に触っちゃって。床に足を降ろそうと思って……」
「いきなり女性の足に触るんじゃありませんよ。失礼にも程があります」
「あはは……あんまり慣れてないからね」
「だったら迂闊にするんじゃありません、全く……」
呆れたように言うトキヤ。私の足に触れたのは音也のようだ。地に足が着いたのを感じると、私の手は掴まれ、ぐいっと引っ張られた。少しふらつきながらも私はちゃんと立ち上がった。
「足元、気をつけてね。手は俺が引くから」
引かれるがまま、私は歩き始めた。目隠しを付けた状態でどこに行くのだろうか。さすがに気になったので聞いた。
「大丈夫ですよ。さぁ、その身を今すぐ私たちに委ねてください……」
後ろからトキヤの返事が聞こえた。肩に手を置かれた感触がした。それら全ての行動がどこか異質で、本来ならドキドキが沸き上がるのだろうけど、今はただ得体の知れない不安が広がっていた。いつからか、疑念が生まれていた。疑念の刃が見え隠れしていた。
はたして、彼らに愛という免罪符は存在するのだろうか?
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