空が夕闇に包まれている頃、俺はぼんやりと窓から外を眺めていた。
「珍しいね。正臣が窓の外眺めてるなんて」
不意に後ろから声をかけられた。振り向くと、そこには予想通り沙樹がいた。
「珍しいか?」
「うん、珍しいよ」
「そうか……」
「池袋が恋しくなっちゃった?」
沙樹は痛い所をついてくる。全く、察しがいいよな……。
「まぁ、な。違う、って言ったら嘘になるな」
「そう。やっぱ友達が恋しい?」
「………あぁ」
「だったら会いに行けばいいじゃん」
「無理だよ。まだ、俺の中で色々整理できてねぇ」
「ふぅん……そうなんだ」
あるホテルの一室。俺達は臨也さんに頼まれて、東北の方に行っていた。だけど一週間くらい前に突然、東京に戻ってくるよう言われた。まだ途中だっていうのに……。
仕方なく戻って来たら来たで、報告しに行った時はいないし、次の指示は新宿で待機だし……。
とにかく、色々とあの人にいらつきを覚えながら、とりあえずホテルに待機している。
沙樹がソファに座ったから、俺は隣に座ることにした。
「臨也さんから連絡来ないね」
「またいつもの気まぐれだろ?そのうち調査再開しろって言って東北に行かされるさ」
「そうかな?」
「そうだろ」
「もしかしたら、何か大変な事が起こるのかもよ?」
「…………。何もなきゃ、いいけどな。……チャットやってもいいか?」
「いいよ。でも夕方に他の人、来るの?」
「臨也さんかセットンさんはいるだろ。悪ィな、沙樹」
「平気だよ。気にしないで」
「んじゃ、遠慮なく!」
俺は携帯を開き、『バキュラ』というハンドルネームで参加しているチャットを開いた。
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