「僕と雪華ちゃんは、一度会った事あるよね?」
「……っ」
「もしかして、僕の事忘れた?」
「…………」
さて、どうしたものか……。ここで人違いだと言ってもいいのだが、後々気まずいだろう。
それに、昔少しお世話になったからな……。まぁ、他に誰もいないわけだし、ここは同意をしておこう。
「はい。一度だけ……」
「やっぱりね」
「よく覚えてましたね」
「いやぁ、君のその態度は7年前から全っ然変わってないからね」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「あははは。それより、元気だったかい?」
「まぁ、それなりに」
「そう。それはよかった」
「…………」
よかった、か……。
「浮かない顔してるね……どうかした?」
「特に……何もないですよ」
「そんなふうには見えないよ?」
「……関係ない……事ですから」
「……そう」
沈黙。何とも言えない空気が満ちている。
7年前……か。あの時は本当にいい思い出がない。お兄ちゃんが嫌いになったのも、世間が嫌いになったのも、にんげんが嫌いになったのも、全て7年前だ。
7年前のあの時から今まで揺るがなかった私の心は、どうして今になって揺らいでいるのだろう。
両手にあるコップを見つめる。紅茶の鏡は、浮かない表情の私が映し出されている。
今の私は、何がしたいんだろう……?
それすらも、わからなくなってきた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!