「えっ!?……いや、なんとも……」
急に話を振られたので曖昧に答えた。少し困った様子でセルティさんの方を見てみる。するとすぐフォローしてくれた。
『新羅、雪華が困ってるだろう』
「あ、ごめんね?」
「とりあえず、頼んだぜ。セルティ」
『ああ』
「あれ?僕はスルー?」
「じゃあな。邪魔した」
『なんか悪いから、駅前まで送るよ』
「いや、そりゃ悪ィから遠慮すんよ」
『送らせてくれ!』
「でも、雪華を新羅と二人きりにさせとくのもよ……」
平和島静雄はチラリと岸谷新羅の方を見た。それに気付いた岸谷新羅は心外そうに言った。
「ちょっとちょっと!そんなに僕の信用はないの!?いくらなんでもそれは酷すぎない?第一、僕の恋人は未来永劫、セルティただ一人なんだから!!」
へぇ……彼はセルティさんの事が好きなんだ。なんか、意外というか、変わってるというか……不思議だな。
心配をかけまいと、私は平和島静雄に向けて作り笑いを顔に貼り付けた。
「私の事は、大丈夫だから。気にしないで」
「そうか……ならいいけどよ」
『新羅、絶対に解剖したり変な質問責めをしたりするなよ?』
「わかってるって。いってらっしゃい」
『いってくる。行くぞ、静雄』
「あぁ。じゃあな、雪華」
「うん、またね」
セルティさんは平和島静雄を送りに出た。そして、結果的に岸谷新羅と二人きりになった。
……さっき解剖とか言ってたけど、私、大丈夫かな?少し不安だ……。
「あー言っておくけど、君を解剖したりしないからね?」
「ぅ!?」
考えを読まれたらしい。
「セルティも静雄もさ、僕には解剖癖があると思ってるみたいだけど、そんな事ないからね?だから、そんなに固くならなくていいよ。……まぁとりあえず、ソファにでも座って」
「あ……じゃあ、遠慮なく」
「どうぞどうぞ。あ、コーヒーは飲めるかい?」
「コーヒーは……苦手です……」
「そうか……じゃあ紅茶は?」
「それなら大丈夫です」
「煎れてくるね」
「は、はい」
私がソファに座ると、岸谷新羅はカウンターキッチンへ行き紅茶を煎れ始めた。
それにしてもこのマンション、広いなぁ……。きっと家賃とか高いんだろう。
そんな割とどうでもいい事を考えているうちに、岸谷新羅がマグカップを両手に持ってやって来た。
「はい、どうぞ」
マグカップを差し出される。それをそっと受け取った。
「どうも……」
私がマグカップを受け取ったのを確認すると、岸谷新羅は私の隣……というか、人一人分空けて座った。
「ちょっと君に一つ、聞きたい事があるんだけどさ……聞いていいかい?」
「私が答えられる内容なら」
マグカップに煎れられている紅茶をゆっくり啜る。
「じゃあ聞くね。僕と雪華ちゃんは、一度会った事あるよね?」
「………っ」
マグカップを落としそうになる。やっぱり、隠し通すには無理があったか……。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!