よし、そうとなれば作戦決行だ。
「ねぇ」
「なんだ?」
「今日、泊まってもいい?」
「どこにだ?」
「貴方の家に」
「……!?はぁ!!?なんでだよ!?」
「お金ないから」
「いや……でもよぉ、その……あれだ。いくらなんでも急すぎるだろ」
「泊めて……くれないのね」
少し目を潤わせてみる。だが……
「ダメだ」
断られた。
うーん……これじゃ、折原臨也の反応が見られない。もう少し押してみるか。
「どうして?」
「どうしても何も……よくねぇ事はよくねぇだろ」
「よくない事って?」
「…………とにかく!!俺ん家は無理だ。ぜってぇ無理だ!」
……無理か。泊まるのが一番早いと思ったけど……ダメだったか。でも冗談抜きで、今晩過ごす場所がないんだよなぁ……。
とりあえず、今日は平和島静雄の家を諦めよう。いつか泊まってやる。
目下の問題とも言える、今晩の寝床を確保しとこう。流石に園原杏里の所は迷惑になるだろうし。
「そう……。じゃあせめて、何処か泊めてくれる所、ない?」
「あ?なんでだ?」
「え?……ぁ、そっか」
私は新宿に住んでいると思っていたのか。そうすると……どう言い訳をしようか。うーん……。
「……『そっか』って何が『そっか』なんだ?」
「え……と……あれですよ……あれ」
「あ?あれって何だよ」
「ぅ……と……」
切り返しが早いな……。鈍そうに見えて意外に鋭い。だから、折原臨也は彼を嫌うのか……。
って、それよりもこの状態をなんとかしないと……。…………ベタかもしれないけど、あれで行ってみよう。
ちょっと演技っぽいけれど、か細い声で言った。
「…………す」
「? す?」
「……ぇなく……なったんです」
「ハッキリ言えよ。聞き取れねぇ」
平和島静雄が少しいらついている。……耐えろ、私。
私は大きく息を吸って、思い切って言った。
「家賃、払えなくなったんです!」
「……は?」
拍子抜けているようだ。畳み掛けるように、続けて言う。
「実はっ……前にバイトしてた所で、ちょっとしたトラブルに巻き込まれちゃって……それで、お前のせいだ、責任を取れ、って……言われて……辞めさせられたんです……。私、何もしてないのに!」
「…………」
「収入が無くなって、しばらくは貯金があったから大丈夫だったけど、先週から底をついちゃって……。アパートの管理人さんからは追い出されるし、親に言ったら戻って来いって言われるだろうし……昨日までは、友達の家に泊まってたけど、流石に悪いなって思って……だから……だからっ……」
言ってて悲しくなってきた。自然と涙が溢れてくる。……あぁ、これで何処にも泊まれなかったら残念すぎるな。
溢れてきた涙を拭いながら平和島静雄をチラリと見てみる。ふと、目があった。真剣な目でこちらを見ている……。
「お前の事情はなんとなくわかった」
「……!」
泊めてくれるのか、と思い、パッと顔を上げる。そこにはそっぽを向いた平和島静雄の姿が。……あれ?失敗した?嘘だ、ってわかっちゃったかな……?
不安と期待が混ざり合う中、平和島静雄の言葉を待つ。
「詳しい事は聞かねぇよ」
そうしてくれなきゃこっちが大変だい。
「セルティん家でいいか?」
「セルティ……さん家?」
どうしてそこでセルティさんが出て来るんだ?そもそも、セルティさんは妖精(?)だから、家とかないんじゃ……
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