池袋駅の中を歩き、西口から出て少し歩いた所にそれはあった。
「ここが西口公園だ」
「……案外、平凡な所なんだ」
「まぁ……な。そこがいいっつーか、そんな感じだ」
「ふぅん……」
平和島静雄に案内されたのは、公園というよりはちょっとした休憩スペースのような感じだった。
唯一公園らしいものと言えば、中央に噴水がある程度。これといって仕切りがあるわけでもなく、遊具があるわけでもない。私のイメージしていた公園とは違っていた。
「そんな驚く所か?」
「公園……って感じじゃない」
「……あぁ、イメージしていたのと違ったのか?」
「……!!まぁ……そうだけど」
「今は昼間ってのもあるから、あんま人いねぇしな。落ち着くだろ」
「……そうですね」
騒がしい池袋で、ゆったりとした空間。これといって何かがある所じゃないけれど、いい所。
「落ち着きますね」
「だろ?……立ち話もなんだから、適当にベンチにでも座るか」
「そう……ですね」
近くにあるベンチに腰をかける。太陽がちょうどよく当たって、暖かい。
「こういう日もいいよな。街の喧騒から離れて、人があんまりいない所でのんびり過ごすってのも」
「にんげんのいない所……か。行ってみたいなぁ」
「行けばいいじゃねぇか。ガキって程の歳じゃねぇだろ?」
「そんなことない……。まだ18だし、そんな自立した生活を送れる程働いていない」
「そうなんか。……ところでよ、一つ言っていいか?」
「何?」
「その中途半端に敬語使うの、やめろ」
「……え?」
「タメ口なのか敬語使うのか、はっきりしろよ」
「……なんで?」
「俺が落ち着かねぇから」
「……意外と自己中心的なんだね」
「うるせぇ」
平和島静雄はそう言うと、私の頬を抓った。
「いはっ!!いはいへひゅっへ!!」
痛い。地味に痛い。でもって喋りにくい。なにこれ酷い……。
「女を殴る趣味はねぇからよ」
だから何だ。殴る趣味はなくても頬を抓る趣味ならあるのか?というか手加減ってものを知らないのか?
だんだん辛くなってきた……。反論するにも、頬を抓られているので、喋りにくい。というか喋りたくない。
あー……ちょっと真面目に涙でてきそう……。目に涙が溜まり始めた頃、ようやく頬を抓る指が離された。
「あー……やりすぎたか?」
自覚なしか!!なんとも厄介だな……。
「すごく痛かった」
抓られた頬をさする。……痣とかにならないよね?
「悪ィ悪ィ。加減はしたつもりなんだけどな」
「いっそのこと、力を入れなければいいんじゃない?」
ちょっと皮肉っぽく言ってみた。すると、平和島静雄は少し落ち込んだ様子で言った。
「そう……かもな」
そんな露骨に落ち込まれると困るな……。というか、意外とにんげんらしい一面もあるのか。
言葉には出さず、心の中で呟く。迂闊に口に出して、トラブルになるのは面倒だしね。
しばらく黙っていると、平和島静雄から話しかけてきた。というか、毎回そうか。
「タメ口で話せよ」
「へ……?」
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!