ふむ……。やっぱりな。ある意味、予想通りだ。
指定された場所に行くと、臨也が待っていた。ただの依頼なら、いつものように電話で一方的に頼めばいいのに。
そんな事を思っていると、
「運び屋さぁ、今、電話で頼めばいいのに、って思ったでしょ?」
と言われたので、
『……だから何だ?』
と返してやった。
「別に。少しは人間らしいんだな、って思っただけだよ」
『あっそう。で、何の依頼だ?』
「それなんだけどねぇ、今回は少し特殊なんだよ」
『特殊?』
「そ。本当は他に頼むような事じゃないんだけどね。君も噂ぐらい聞いた事あるんじゃないかな?」
『何の事だ?』
「クレイジーリッパー」
クレイジー……リッパー……あぁ、あれか。
『確か、恋人だけを狙う切り裂き魔、だよな?』
「そう!仲睦まじい恋人同士を白昼堂々と切り付ける、イカれた奴さ」
『そのクレイジーリッパーが、何かあるのか?』
「そうみたいなんだよねぇ……。実はさ、俺と雪華でおびき寄せようとしたんだ。もちろん雪華には仕事だ、って言ってクレイジーリッパーの事は秘密でね」
『あの子を巻き込んだのか!?』
「俺としては残念な事に、雪華は途中で怒って帰っちゃってね。クレイジーリッパーの事がバレたんじゃないよ?ちょっと別件でね」
色々聞きたい事があるが今は我慢しよう。
「で、君に頼みたい事はね」
『クレイジーリッパーを捕まえるのか?』
「いや、それは警察とかに任せるつもりだよ。俺が運び屋に依頼さたいのはクレイジーリッパーがどんな奴か、って事」
『つまり正体を暴け、って事か?』
「まぁ、そういう事。でね、今ちょうどいいカップルを見付けたから、そいつらに尾行してほしいんだよね。君なら簡単だろう?」
まぁ、気付かれない事もないが……なんか気が引けるなぁ。
私が返事もしないうちに、臨也はちょうどいいカップルの名前を告げた。
その名前を聞いた瞬間、私はこう思った。
あぁ、やっぱり嫌な依頼だ。
そして最低な奴だな。
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