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DRRR!!夢[臨也]
 


「いや、それは絶対にありえないです」

「虚構と現実の区別はちゃんとつけろ……!!」

 目を輝かせながら聞く狩沢絵理華に対し、慣れたようにツッコむ門田京平。
 ……というか、許婚はないでしょう。どんな頭してるんだ?第一、私と門田京平がそんな関係だなんて、あるはずがない。だって、彼は――

「雪華ちゃん?」

「えっ!?」

 不意に狩沢絵理華に話し掛けられた。

「どうしたの?難しい顔して……。もしかして、すごく気分を害しちゃった?」

 彼女は心配そうな顔で私を見る。……そういう、にんげんを気遣う顔とか視線とか、嫌い。

「大丈夫……です」

「ならいいけど……でも何か顔色悪いよ?」

 やめて……。

「平気……」

「本当に?あんまり無理しないほうがいいよ?」

 そんな顔して私を見ないで……。

「本当に大丈夫ですからっ!!」

「ん……ならいいけどさ……」

 怖い……コワイ……。

「お前……ちゃんと薬飲んでるか?」

 やめて……やめてやめてやめて……っ!!!

「……ぁ……ぁぁ……や……めて……」

「……っ」

「雪華……ちゃん?」

 嫌……心配そうな目で見ないで……私を裏切らないで。その先の言葉は言わないでお願いごめんなさいごめんなさい

「ごめんなさい」

「えっ?」

「まずいな」

「ごめんなさいもう迷惑かけませんからごめんなさいそんな目で見ないでお願いやめて見ないでコワイ嫌あぁ」

「落ち着け、雪華」

「ごめんなさいごめんなさい」

「落ち着いて深呼吸しろ、雪華」

「ぁあぁ……すっ……ぁ、あっ……ぅ」

 涙が零れる。だんだん落ち着きが戻ってくる。まだ呼吸が整わない。狩沢絵理華が驚いているのが見える。

「落ち着いたか?」

「……だ、いぶ……」

「薬は飲んでんのか?」

「一年前に……やめた」

「もう、大丈夫だったのか?」

首を縦に振る。

「そうか……」

「ぁ、雪華ちゃん……」

「謝らなくて……いい」

「でも……」

「原因は私にもある。主な原因は門田京平だけど」

 私はそう言って、門田京平を睨んだ。本人も多少は自覚しているようだ。

「やっぱり、な……。今は俺が引き返す。一人で平気か?」

「アンタの世話はいらない」

「ならいい。色々気をつけろよ。……行くぞ、狩沢」

「えっ!?でもドタチン、雪華ちゃん……」

「本人が大丈夫って言ってんだから、大丈夫だ」

「でも……」

 困ったような顔をしている狩沢絵理華に、私は言った。

「行っていいよ」

「あ……うん。わかった……」

「じゃあな」

「ばいばい」

 門田京平と狩沢絵理華が去った。
 ……治ったと思ったんだけどなぁ。やっぱそう簡単に治らないか。さっきの騒ぎ、周りは気付いてないよね……?とりあえず、別の場所に行こう。

 私は行くあてもなく、池袋の街を歩き出した。




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あきゅろす。
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