「着替え、ないんですか……?」
そのままの服で寝ようとした私に園原杏里が問い掛けた。
「あー、大丈夫大丈夫。こういうの慣れてるから」
「私の使ってないやつ、使いますか?」
「いいって。本当に大丈夫だから。あ、私床で寝れるから、遠慮なくベットで寝て」
「で、でも……」
「いーからいーから。毛布だけ貸してくれれば十分」
「本当にいいんですか?」
「うん。さ、毛布貸して」
「あ……はい……」
私は園原杏里から毛布を受け取ると、包まった。
「本当にいいんですか……?」
「それ、何回言ってるの?本当に大丈夫だから」
「ごめんなさい……」
「いや、謝られるような事は何もしてないし……。初対面なのに泊めてほしいって言ったのは私だから」
「はい……」
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみなさい……」
普段、折原臨也の前とは違い、ストレートにおやすみを言った。
園原杏里は、何だか接しやすい。謙虚だし、大人しいし……初対面を泊めるのはどうかと思うけど、まぁそれなりにいいにんげん。
……って、なんで私は初対面の彼女をここまで過大評価しているのだろう。不思議な感じがする少女だが……。
ま、いっか。それにひきかえ、折原臨也はどうしようもないにんげんだよな。うざいし、何考えてるかわからないし、うざいし、自分勝手だし、うざいし、…………。本当、何がしたいのかよくわからない。どう育てたらあんな精神構造になるんだか……。
第一、初対面同然の女の子をいきなり泊めるか?アウトでしょう、普通に。住み心地は悪くないけど……。あんな広い部屋に一人で住んでるなんて、もったいないよな。矢霧波江も住まわせばいいのに。よくわからない奴だ。しねばいいのに。
……ってちょっと待った!どうして折原臨也の事なんか考えてんの!?なんで!?馬鹿みたい……。せっかく逃げて来たのに……。
あの馬鹿が頭から離れない。
…………。
重症……だな。逃げてきて正解だ。しばらくはゆっくり池袋の街でも満喫するかぁ……。
そうだ、セルティさんに街を案内してもらおう。折原臨也の事を忘れるくらい、思いっきり羽を伸ばしてやる。
あぁ……だんだん眠くなってきたな……。
そのまま私はずるずると、深い眠りに落ちた。
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