いつも通りのファーコートを着た折原臨也といつも通りの動きやすい格好の私。きっとはたから見たら、奇妙な組み合わせなのだろう。さっきから通行人がチラチラと私達を見ている。……ま、昔色々とやってたみたいだからね。それに浮いてるし。
「はい、わかりました。あんまりそういうのは得意じゃないですが、できるだけ善処しますよ。では」
折原臨也は電話を切り、携帯をポケットの中へとしまった。
「……で、何をすればいいの?」
「うーんとね、俺と雪華が恋人になればいいの」
「……は?」
「今から俺と雪華はカップルだ」
「しねばいいのに」
「でた、雪華の得意技。でもねぇ、ターゲットはカップルに寄ってくるらしいんだよ」
「……要するに、私達を餌に何かするの?」
「ピーンポーン!大正解」
……笑顔でそう言われると何か腹立つ。というか……
「なんで引き受けたのかわからない」
「深い理由はないよ。ただ俺がいつも頼んでる所がどこもいっぱいらしくてね。もっと雪華の事知りたいし、ちょうどいいかな、と思って」
そうですか。結構な確信犯じゃないの?これ。
「…………。具体的にどうしろと?」
「まずお互いに名前呼び合う所から」
「嫌だ」
「あのさ……これ一応依頼だからさ、ちゃんとやってくれないかな?」
「……もしかして、今日矢霧波江が来なかったのって……」
「半分くらい、これが関係あるかもね」
「…………」
やっぱり……。
「そんな絶望した顔しないでよ……。傷付くよ?俺」
「勝手に傷付けばいい」
「まぁさ、仕事だから。ここは運命と思って受け入れなよ」
「……仕事、だよね」
「そうだよ?残念だねぇ……」
「どこが?」
「いや……気にしないで」
「ふぅん……ま、どいでもいいけど。仕事だから、仕方ない。今日だけ、恋人のフリをしてあげるよ。ぼっち臨也」