私は今、折原臨也の住むマンションで、一人留守番をしている。彼は矢霧波江と二人で、用事を済ますそうだ。私はその用事がどんな内容かなんて知らない。別に知ろうとも思わない。
私は今日も変わらず、にんげんが大嫌いなままである。
「これは……リッパーナイトの……?」
棚を適当に物色していたら、とある資料を見付けた。
『リッパーナイト』と呼ばれる、切り裂き魔事件についてのであろう。一晩で50人以上の被害者が出たという事件。
……この事件に、折原臨也は係わっていたのだろうか?
資料の入っているであろうファイルを手に取り、ソファに座ってからページを開いた。最初の方は、新聞の切り抜きのようだ。いくつか、見かけた事がある。パラパラとページをめくっていく。
「情報屋でも、新聞取るんだ……」
最後の方になると、週刊誌の切り抜きがスクラップされていた。
……なーんだ、これだけか。私はファイルを閉じて、立ち上がると棚に戻り、元の位置にファイルを戻した。が、なかなかファイルが入らない。
……まさか、一度取ったら戻せないってやつ?戻せないと読んだ、ってバレちゃうなぁ……。
ファイルを一旦出して、何か物が詰まってないか、見てみた。すると、奥の方に封筒が入っていた。
「………、」
手を入れて、封筒を取り出してみた。……封筒は、まだ新しいようだ。封はされていない。開けてみると、中には紙が数枚、入っていた。
「…………」
まだ……来ないよね?三ヶ島沙樹と紀田正臣。
……うん、多分、大丈夫。
「ちょっとぐらいなら、平気だよね」
紙を取り出し、中身に目を通す。
……。
…………。
「ふざけてるの……?」
手に怒りがいかないように抑える。紙にシワが入っては元も子もない。
紙を封筒に戻そうとしたら、まだ中に紙が入っているのに気付いた。厚みから見て、写真のようだ。紙と入れ違いで写真を取り出す。そしてよく見てみる。
「こ、これは……っ!!」
そこに写っていたのは――――
ピーンポーン……
チャイムの音が広い部屋に響き渡ると同時に、私は我に返った。
……しまった、つい夢中で読んじゃった!!
慌てて写真を封筒に戻し、封筒をファイルと共に棚に押し込んだ。
モニターの前に行くと、まだ高校生らしき男女が写っていた。この二人が、紀田正臣と三ヶ島沙樹……?疑問に思いつつも、部屋に通すことにした。
しばらくすると、さっきモニターに写っていた男女――紀田正臣と三ヶ島沙樹が部屋に入ってきた。そして、私の姿を見るなり、驚いたような素っ頓狂な声をあげた。
「貴女……誰っすか?」
「うーん……秘密」
「侵入者とかじゃないっすよね?」
「もし、仮に私が不法侵入者だったとしたら、貴方達を部屋に通す訳がないと思いますが?」