黒バイクの主はいきなりPDAを私の前に出した。私が驚いたのに気付いたのか、バックライトの明かりを調整してくれた。
『あぁゴメン!いきなり出したから眩しかったかな?』
「はい……」
『ホントにゴメンね。で、何か聞きたいことがあるのかな?』
「えっと……」
『遠慮せずに、何でも聞いていいよ』
そう言うなら遠慮せずに聞こうかな……。
「じゃあ……貴方は喋れないんですか?」
『うーん……まぁ、そんな感じだ』
……遠慮しなさすぎたかな?
黒バイクの主は少し気まずそうに答えた。…………多分。
『他には?』
「影ってどうやって出しているんですか?」
『それを説明するのは難しいな……。まぁ、ちょっとした手品だと思ってよ』
「はぁ……。じゃあ、なんでこのバイクは真っ黒なんですか?」
『シューターのことか?』
「名前……付いてんですか?」
『まぁな。バイクが真っ黒なのは、影の産物……かな?』
すると黒バイクから馬の嘶き声がした。
「!?」
『シューターは、元は馬だからな』
「えっ!!?」
黒バイクの主って……一体何者なの?
聞いてみたいけど、聞いてはいけない気がする。なんとなく。もしかしたら自己防衛本能なのかもしれない。あえて聞かないでおこう。
『あー……いきなりこう言われても困るか』
「いえ、とりあえず大丈夫です」
『ならいいけど……そういえば、新宿のどの辺りに住んでるの?』