黒バイクの主―――セルティはPDAにそう打ち込んで私に見せた。
漆黒に包まれたライダースーツ。街灯もない暗い所にいたら、きっと何処にいるかわからなくなるだろう。それ程黒バイクの主は漆黒に染め上げられていた。
ただ一点、フルフェイスのヘルメットを除いて。
『静雄、その娘は?』
「こいつは雪華。新宿に住んでいるらしい」
『で、私にこの娘を家まで送ってほしいのか?』
「あぁ。本当は俺が送ってやりてぇが、あっちには臨也のバカがいるだろう?あのノミ蟲とはぜっっってぇ会いたくねぇからよ、悪ィが送ってやってくんねぇか?」
『わかった。静雄の頼みだしな』
……黒バイクの主は、喋れないのだろうか?目の前の不思議な会話に疑問を抱く。
「おい、雪華」
「ふぇっ!!?」
「何ボーっとしてんだ?」
「べ、別にぼんやりしてたわけじゃない」
「ん?そうか?……セルティが手前のことを送ってくれるってよ」
「ふぅん……」
頼んでないけどなぁ……。
私は黒バイクの主をジーッと見る。すると黒バイクの主は頭を掻きながら、PDAに何かを打ち、私に見せた。
『とりあえず、新宿まで行こうか。後ろに乗って』
「は、はぁ……」
色々な疑念を抱きながらも、私は黒バイクの主の後ろに乗った。
するといきなり、『影』が私の頭を包んだ。
「!!!?」
「あー、大丈夫だ。セルティが影でヘルメット作ってるだけだ」
「か、影でヘルメットて作れるの!!?」
そう言っているうちに、私の頭は『影』のヘルメットで覆われた。