私と平和島静雄は窓際のカウンター席に座った。トレイの上には、シェイクがふたつとLサイズのポテトが鎮座している。
私はバニラ味のシェイクをとり、飲み始めた。平和島静雄はポテトをつまんでいる。
「雪華は何処に住んでんだ?」
「いきなり呼び捨てですか?」
「あ、悪ィ。なんて呼べばいい?」
「ご自由にどうぞ」
「……じゃあ言うなよ」
「前までは池袋に住んでいました」
「……急に話を戻すなよ」
「今は新宿に」
「マイペースだな……」
ちらっと見ると、平和島静雄の顔には血管が浮きあがってる。……にんげんって本当に血管が顔に浮きあがるんだぁ。
じーっと見ていると、こちらの視線に気付いたようで、
「ん……?なんだ?」
と聞かれた。
「なんでもない」
とだけ返して、再びシェイクを吸い始めた。
「それにしても、本当によかったのか?」
「なにが?」
「頼まれごとがあったんだろ?それほっぽいていいのか?」
「あぁ、それですか。全然平気ですよ。むしろドタキャンされたって感じですから」
「ふーん。仕事は何してんだ?」
折原臨也の所で働いてます、と言ったらただの地雷なので、
「……秘密です」
と答えておいた。
「そういう貴方は何してんですか?」
「何してると思う?」
……服装から判断してよいのだろうか?
「バーテン?」
そう答えると、平和島静雄は自嘲ぎみた顔をした。
「そうだよなぁ……。俺の格好を見りゃ、普通そう思うよな」
「? 違うんですか?」
「あぁ。前はそうだったんだけどな。ちょっと店長と揉めちまってさ、クビになったんだ」