「あれ?聞こえなかった?じゃあもう一度言うよ?特になし!」
『……今すぐそっちに戻って貴方を殴ってもいいですか?』
携帯越しでもわかるぐらい、雪華からの殺気が伝わる。
……てか、それじゃあ電話の相手が俺だってバレないかなぁ?
「まぁ、そんなに怒らないでよ」
『貴方が行けって言うから行ったんだけど』
「うーん、そうだねぇ。でもやることないしさ、君、俺と一緒にいるとストレス溜まってます、って顔しているんだもん」
『えぇ、実際かなり溜まってる』
「ストレートすぎ……。まぁさ、シズちゃんとでもゆっくり話でもすれば?」
『……もしかして、それがm』
「おーっと、ストップ!今君の前にシズちゃんがいるのを忘れてないかい?」
『っ……』
「そんなにさ、堅く考えないでよ。とにかく、少しは外でゆっくり過ごしな」
『あっそ』
雪華はそう言うと電話を切ってしまったようだ。
あぁ……少し残念。最後に「大好きだよ、雪華」って言いたかったのに。
「何ニヤついてんの?気持ち悪いわよ」
近くで書類整理をしていた波江に凍った視線を放たれた。
「べっつに。俺もゆっくりしたいなぁーって思っただけさ」