最後の最後まで、嫌な奴。
睨もうとしたその時、腕を掴まれソファに座らされた。背中に腕を回されて逃げるに逃げれない状況になってしまった。
再び近付く顔と顔。その距離はゼロ。
「……!!」
「雪華の帰る場所は、ここでしょ?」
「ち、ちがっ……」
「おやおや?さっきのお返しのつもりだったんだけど……やっぱやられるのは慣れてないんだね」
「う、うるさい!ここは私の家じゃ」
「もう一回する?」
「〜〜!!!」
もうこれ殆ど脅しじゃない……。そう突っ込む暇もなく私達の距離は再びゼロとなった。
「まぁ気にしないでよ」
「はぁ!?」
「迷惑なんてかけるものさ。それに俺のこと嫌いなんだろ?ちょっといいじゃん。雪華がここに居たって、俺は迷惑だなんて思わない」
「……ほん、とに?」
「本当に」
「死ぬかもしれないよ?」
「死なないよ。心配してくれるんだね」
「死ね」
「どっちだよ」
「……ばか」
臨也の服を掴んだ。次から次へと涙が零れる。泣いていると気付いた時には嗚咽が漏れていた。
全てを押し殺すために彼の胸に顔を埋めた。背中を優しく撫でられる。子供をあやすかのように、優しく。
にんげんなんて大嫌い。
憎しみも、怒りも、偽りも、嘘も、優しさも、親しさも、嬉しさも、楽しさも、悲しみも、痛みも、喜びも、哀れさも、恐さも苦しさも労りも友情も努力も勝利も何もかもにんげんとしての全てが、嫌いで嫌いでしょうがない。
はずだった。だけど……
たまには信じて見てもいいかな、と思えた。
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